久しぶりの投稿になります。急に新しいことを始めると、それまでやっていたことをしなくなるのは良くないですね。短いスパンで投稿できるように頑張ります。

 

 

あらすじ

 
 高校に入学してすぐの頃、アイはとある数学教師から「この世界にアイは存在しません。」と言われた。もちろんそれは彼女のことではなく“虚数のi”のことであったが、その言葉はアイの心に深く刻み込まれた。
 
 
 優しい両親に裕福な家庭。アイは恵まれた環境で育ったが、自分が養子であることに引け目を感じていた。両親からの愛は自分が受け取って良いのか、その愛は本物なのかと。
さらに、高校時代に出会い親友となった「ミナ」や初めての恋人となった「ユウ」との間にもトラブルが。
 
 
 また、日本を含め世界中で起きる災害や痛ましい事件・事故、そして戦争。アイはそれらに巻き込まれた人々に心を寄せて悲しむが、一方で逃れてしまったと苦しみます。様々な苦悩を抱えた「アイ」を通して作者が伝えたい思いとは。
 
 

感想

 

 終始よく考えさせられる作品でした。例えば「愛」。家族、親友、恋人など僕らを取り巻くさまざまな関係に「愛」があり、だから嬉しかったり、それ故に悩んだりします。

しかし、もし「関係」がなければその人との間に「愛」はないのでしょうか。

 

 

 「関係」がある「愛」とは何か考えた時、気遣い、思いやり、という言葉が頭の中に浮かびました。それでは、「関係」がない人にそれが行えたなら「愛」があるのではないか。そしてそれが「優しさ」なのでは、と考えました。「関係」のない人にも優しく接する人は、「愛」がある人で僕もそうなれると良いなと思いました。

 

 

 それから、世界中で起きている悲しい出来事にちゃんと向き合おうとも思いました。僕はこれまで、そういった「悲しい出来事」は自分にはどうしようもないし、関係ないと目を背けてきました。でも、よく考えてみると「どうしようもない」、「関係がない」から「目を背ける」ことは悪いことではないけど、寂しいことのような気がします。

 

 

 こんなふうに色々と考えました。作者の西さんが伝えたかったことは何か、確かではないけれど、僕は「愛」をもって生きていこうよ、そして人に優しくなろうよ、と言われた気がしました。

今、世界はコロナや人種差別の騒ぎで優しさを手放してしまった様に見えます。僕はこんな時期だからこそ、この作品に出会えて良かったなと思いました。

 

 

 文庫版だけに収録された又吉さんと作者の西さんとの対談も良いものでした。