2025年10月20日。
今年続けてきたことが、先日ひとつ形になりました。
2026シーズン、筑波大学蹴球部で「大学版サッカー外傷・障害調査-プレ」を正式に実施することが決まりました。
小井土監督との1時間の面談は、計画を前に進めるため、具体的なアドバイスをいただき有意義な時間となりました。やっぱりこの方はすごい。自分はずっと小井土信者だと思います。
ここに至るまで、大学の先生方に協力を依頼し、数ヶ月あまり資料をつくり関係者に推敲をお願いし、何度も自分の言葉を磨きました。
発表の次の大きな山は、来シーズンの関東連盟の監督会議。
ここで、関東所属の大学サッカー部の監督のみなさんに協力をお願いしていきます。
この一年、「で、今年は何をしてるの?」とよく聞かれました。
昨年まで肩書きだった“筑波大学蹴球部トレーナー”という大きな看板を下ろした自分は、何者ともいえない。外から見えづらい存在だったのかもしれません。
だからこそ今回は、今年の個人活動の総括として、本調査の説明を、ご協力いただいた皆さんへの“ささやかな恩返し”として、"言葉"に残しておきます。
以前ブログに記しましたが、自分には、「サッカー界への恩返しという夢」があります。
そして、
目標① サッカー日本代表がワールドカップを優勝する時に代表に関わること。
目標② 外傷・障害調査を通じて、ケガで苦しむ人を一人でも減らすこと。
を掲げています。
夢は語るだけでは終わらせません。
叶えるまでが計画です。
途中の失敗は、成功へ至る過程の一部。
怖いときほど、そう自分に言い聞かせて歩みを止めない。それが、今年の自分のやり方でした。
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目次
1. 外傷・障害調査とは
2. 大学サッカーの現実
3. 大学版サッカー外傷・障害調査
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1. 外傷・障害調査とは
多くの方に馴染みのない外傷・障害調査について、最初に記しておきます。
簡単に説明すると、「全体を把握する」資料です。
ある環境で発生する外傷・障害※の実数を把握することであり、その結果をもとに怪我を減らすための対策が立てられます。
この調査において、日本のスポーツ界は欧米諸国と比べると論文数も調査規模もかなり劣っているというのが現状です。
※用語の整理
・外傷(acute injury):明確な出来事が引き金となって起きるケガ。例)タックルで足関節を捻る、接触で肩を脱臼する。
・障害(overuse injury):小さな負荷の蓄積で徐々に発症・増悪するもの。例)疲労骨折、アキレス腱障害、鼠径部痛症候群。
既存の取り組みとして、2つほど紹介します。
Bリーグ:シーズンを通じて傷害を把握・共有するレポート文化が根づきつつあります。全チームが提出を義務として参加している大規模な調査です。
個人的にBリーグのリーグ機構は学ぶべき点が多いと感じていますが、この調査形態に関してはJリーグにも取り入れて欲しいと感じます…(今週Bリーグの担当者とも面会をしてきます!)
BLEAGUE_2024_25_SEASON_InjuryReport.pdf
JFA-Survey:日本サッカー協会の調査枠組み。カテゴリ横断の標準化・可視化が進み、国内での「定義×方法×共有」の共通言語が育ってきました。しかし、個人の怪我という秘匿性の高い情報を外部に出すことを反対するJリーグのチームが未だに多く存在することは課題の一つとなっています。
大学版サッカー外傷・障害調査は、この流れを大学サッカーの現場に最適化して実装する試みです。
「定義が揃う→数え方が揃う→比べられる→改善できる」。
この“あたり前”を大学現場の実務に落とし込みます。
なぜこの取り組みが必要なのか?
いまのスポーツ現場は“善意”で回っています。
でも、善意だけでは再現性がない。人が替わればやり方も結果も変わります。
“同じものを、同じ方法で数える”と、
初めて「どこが危ないのか」「何を変えればいいのか」が見えます。
これは大型センサーやAIがなくてもできる“現場の科学”。
最初の一歩は、記録を同じ言葉と型で残すことから始まります。
2. 大学サッカーの現実
これは奥垣の大好きな写真です。
2024シーズンの天皇杯3回戦柏レイソル戦の同点に追いついたシーン。
歓声が今にも写真から響いてきそうなこの写真に写ってる人たちは、一般の人たちです。
筑波の部員たちでもないし、わざわざお金を払って我々大学サッカーのジャイアントキリングを観にきた人たちです。
この写真を見るたびに、大学サッカーは最高だなって思います。
大学サッカーの魅力は以下の二つだと思います。
・競技力の高さ:プロに直結する選手が毎年100名近く生まれる。
・学生による運営:学生主体のリーグ文化は、世界的に見ても希有な資産。
しかし、大学サッカーの厳しい現実も理解しています。
・認知の壁:競技レベルに比して、社会的な見られ方は十分とは言えない。
・ずさんさ(構造的な脆弱さ):
体制が属人的/短期的になりやすい
記録の継承が難しく、データが“流れて”しまう
「やっているつもり」の取り組みが、標準化されておらず比較できない
だからこそ、“数える”“比べる”“続ける”の3点セットが必要です。
その入口が、大学版サッカー外傷・障害調査です。
3. 大学版サッカー外傷・障害調査の計画
理念として、
1.Jリーグ・日本サッカー界の発展
2. 大学サッカーの価値向上
3. 競技力の向上と大学サッカーの認知度UP
を掲げています。以下は先日使用した資料の一部です。
2026シーズンはこの調査のフェーズ1として筑波大学蹴球部でのプレ調査を実施します。
トップチームを対象に外傷や障害の発生日/部位/受傷機転、トレーニング・試合の参加時間などを収集します。
段階的計画としては以下のフェーズで検討をしています。
フェーズ1|実装&定着(2026~)
筑波大でプレ調査実施、シーズンレポート→現場フィードバック
フェーズ2|水平展開(2028~)
関東複数校で同一プロトコル/“同じ言葉で数える”を拡張/論文として公式なものとしていく。
フェーズ3|連盟規模での調査実施(2032〜)
関東連盟での調査を実施/地方大学でもプレ調査を開始。
フェーズ1の開始に伴い、フェーズ2に向けて、水面下で各大学のメディカルスタッフ、JFAのサーベイランス委員会の先生方とも話を進めている段階です。
年内の大きな進捗はないと思いますが、フェーズ2に移行する段階で皆さんにまた進捗をご報告できればと思います。
最後に、
Jリーグの競技や運営のレベル。そのレベルを評価するのは容易ではないと思います。
ただ現状欧州の5大リーグとの差は明らかです。
そこをJリーグが目指す以上、最もJリーグに選手とスタッフを輩出する大学サッカーのレベルを維持・向上させることは言うまでもなく、今後必ず取り組み続けないといけません。
自分はそれこそが大学サッカーの価値向上の真価だと思います。
今後ともご支援ご声援のほどどうぞよろしくお願いいたします。
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ある大手広告代理店の方が言いました。
「文章を発信すること、自分の言葉を残すことは人間の使命だ。死んでも残る唯一の存在だ」と。
それでは、
大学版サッカー外傷・障害調査、フェーズ1開始。



