A Patient-Level Meta-Analysis of Intensive Glucose Control in Critically Ill Adults
NEJM Evid. 2024 Aug;3(8):EVIDoa2400082.
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 重症成人患者の集中治療における血糖コントロールに関するMA。院内死亡を主要転帰、90日生存期間や血管拡張薬もしくは強心剤の使用、人工呼吸、CRRT期間を副次的転帰としている。
 38試験(29,537名)が対象となり、そのうち20試験(14,171名)では厳格な血糖コントロール vs 従来の血糖コントロール=7,059名vs7,049名の内容を見ることができた。院内死亡は27.3% vs 26.8%(RR 1.02;95%CI 0.96-1.07)であり、サブグループ解析でも厳格な血糖コントロールの特異性は見られなかった。一方、厳格な血糖コントロールは重症低血糖のリスクを増大させた(RR 3.38, 95%CI 2.99-3.83)。
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 集中治療における血糖コントロールといえば、厳格な血糖コントロールが推奨されたDIGAMI study(1995)に遡る。外科系ICUを対象にしたLeuven Ⅰ(2001)でそれは裏打ちされたが、内科系ICUを対象にしたLeuven Ⅱでは死亡率軽減効果が見られなかった。VISEP(2008)では敗血症患者に対するIITが実施され、死亡率は変わらないが低血糖が多いという理由で中止されている。その後、有名なNICE-SUGARがVan den Berghe氏によって行われ、90日死亡率は従来型の方が良いという結果に終わっている。多くの施設でBS 140-180mg/dLというのが1つのコンセンサスになっているのではないか。
 そもそも、血糖コントロールだけでは語れないところが多い。血糖は単純にインスリンなどのみでコントロールされるものではなく、投与カロリーでも当然影響を受けるわけだから、over-feedingによるglucose toxity(AGEs, IL-6, NF-kBなど)やnutritional stress(REE増加、CO2産生増加、浮腫増悪、autophagy低下など)をも考慮に入れる必要がある。さらに、投与経路がENかPNかでも異なってくるだろう。もちろん、重症度やステロイドの有無も絡んでくる。
 欧州では早期栄養+厳格血糖管理というのが頑なに信じられているという歴史があるらしく、NICE-SUGARから何年も経った頃に、欧州のとあるICUを訪れたところ、IITは当然のように行われていたという逸話を聞いたことがある。ICUはevidenceとbeliefが混在する場所なのだろうと、その話を聞いた時に思った。