Intraoperative Wound Irrigation for the Prevention of Surgical Site Infection After Laparotomy: A Randomized Clinical Trial by CHIR-Net

 

JAMA Surg. 2024 Feb 21:e237985. 

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 2017年9月から2021年12月までドイツの12施設で行われた、多施設共同試験。

 開腹手術689例を無作為に3群(術中に創部を0.04%ポリヘキサニドで洗浄(292例)・生理食塩水で洗浄(295例)・洗浄なし(102例))に分け、術後30日間のSSIをITTで解析。

 患者のうち402人が男性、年齢中央値は65.9歳。

 SSIは全体で11.8%、ポリヘキサニド群では10.6%、生理食塩水群では12.5%、洗浄なしでは12.8%で群間有意差なし。なお、SAEもなし。

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 最近、薄めの消毒液で洗浄するというのが流行している。

 ずっとずっと昔は、消毒液入り生食や抗菌薬入り生食で洗浄する光景を整形外科や心臓外科で良く見たが、EBMという概念に乏しい時代で、良かれと思ってやっているに過ぎなかった。その後、「消毒は組織に良くない」とか、「抗菌薬は局所投与しても意味がなく、全身投与して初めて意味がある」「高い濃度の抗菌薬は組織毒性が強い」などの実験結果が広まり、生食のみのシンプルな洗浄が広く行われている。今回のRCTはSAEは起こらなかったものの、そういう潮流を支持する研究結果となった。

 ただ、この論文の2ヶ月後に10.1001/jamasurg.2024.0775の論文がpublishされている。SR & MAの論文であり、本RCTは結果に含まれていない。本RCTが含まれていたら、どのような結果になったであろうか。今後が注視される。