ワイルド以後 [編集 ]
ワイルドの戯曲化と20世紀 における映画 などの新しい分野の開拓で、サロメはいろいろな芸術作品で素材として扱われるようになった。主なものを以下に挙げる。詳細についてはそれぞれの項目を参照のこと。
文学 [編集 ]
小説 [編集 ]
- Skinny Legs and All
- 現代的な少女「サロメ」が実質的な主人公である、いささか奇人とも言われるアメリカの作家トム・ロビンス の第五作となる小説(1990年 )。その主な筋は、マンハッタンにある国連の建物の向かいに、ユダヤ人とアラブ人の二人がレストランを開くというもの。セクシャルな魅力を持つサロメがレストラン内のクラブで踊ることになる。[10]
- 『サロメの乳母の話』
- 塩野七生 の短編小説。サロメを幼児期から見てきた乳母が「事件」の後にサロメについて語る。同様な趣向の作品をまとめて、短編集『サロメの乳母の話 』(中央公論社 、1983年 )として出版した。[11]
詩 [編集 ]
- 『サロメ』、イギリスの現代詩人キャロル・アン・デュフィ の詩集『世界の妻』(1999年 )に収載。聖書の物語の現代化作品。
- 『イムラム』、イギリスの現代詩人ポール・マルドゥーン の叙事詩(1980年 )で、サロメを語っている。
オペラ [編集 ]
リヒャルト・シュトラウス作品 [編集 ]
詳細は「サロメ (オペラ) 」を参照
リヒャルト・シュトラウス が、ワイルドの戯曲のヘドヴィッヒ・ラハマン によるドイツ語訳をほぼそのまま台本にして、一幕のオペラを作曲した。1905年 にドレスデン で行われた初演は大成功し、シュトラウスはこの作品でオペラにおいても高く評価されることになった。 現在でも、『ばらの騎士 』と並ぶ人気作で各地で上演されており、ドイツ語圏の主要な歌劇場 では多くがレパートリーにしている。
バレエ音楽 [編集 ]
ワイルドが導入した「7枚のヴェールの踊り」と、上記のシュトラウスによるオペラの成功を受けてバレエ作品化が行われている。主なものを以下に示す。
フローラン・シュミット作品 [編集 ]
詳細は「サロメの悲劇 (バレエ音楽) 」を参照
マスネの弟子であったフローラン・シュミット が『サロメの悲劇』というバレエ音楽を1907年 に作曲している。この作品は1時間ほどの作品で20人ほどの小規模なオーケストラ 向けのものである。
シュミットは後にこの作品を素に、30分ほどの同題の交響詩 を作曲した。この交響詩は現在も頻繁に演奏され、多数のレコード・CD録音がある。
伊福部昭作品 [編集 ]
詳細は「サロメ (バレエ音楽) 」を参照
舞踊音楽『サロメ』は1948年 に伊福部昭 が貝谷バレエ団 創立10周年記念として作曲したバレエ作品であり1987年 に演奏会用の曲として手が加えられた。
ペーター・ディヴィーズ作品 [編集 ]
詳細は「サロメ (1978年のバレエ音楽) 」を参照
『サロメ』はオランダの振付師フレミング・フリント (Flemming Flindt)が企画したバレエ作品。作曲はペーター・ディヴィーズ (Peter Maxwell Davies)で、1978年 にコペンハーゲン で初演された。この公演はオランダ国営放送 が収録して、テレビ放映されている。
ポピュラー音楽等 [編集 ]
- No Matter How You Slice It, It's Still Salome は、ミュージカル 『DuBarry was a Lady 』の映画版(1943年 )で追加された曲。ロジャー・エデンス が作り、ヴァージニア・オブライエン が歌っている。
- サロメ は、チェコ のシンガー・ソングライター カーレル・クリール (Karel Kryl)の作品。
- サロメ は、イギリスのロックバンドハウス・オブ・ラヴ の作品で、彼らのデビュー・アルバム『The House of Love 』(1988年 )に収録されている。
- サロメ (Zooromancer edit) は、U2 の作品。作詞:ボノ 、作曲:U2。CDシングル 『Who's gonna ride your wild horses 』(1992年 )に収録されている。8分を超える大作。
- サロメ は、アメリカのカントリー・ソング グループOld 97's の作品で、アルバム 『Too Far to Care 』(1997年 )に収録され、映画『The Break Up 』(2006年 )でライヴ演奏が行われている。
- サロメ は、アメリカの音楽家・作曲家・女優であるリリー・ハイドン の作品。彼女のデビューアルバム『リリー』(1997年 )に収録。
- サロメ は、映画『The Governess』(1998年 )のオリジナル・サウンドトラック盤に収められている曲。エドワード・シェアムール (Edward Shearmur)作曲作品。
- サロメ-7枚目のヴェール は、ドイツのグループキサンドリア (Xandria)のアルバム(2007年 )。サロメと題する曲を収録。
また、歌詞に「サロメ」が登場する曲には次のようなものがある。
- Vigilantes of Love :1990年代に活動したアメリカのロック・グループ
- ゲイリー・ジュールス
:アメリカのシンガー・ソングライター
- "Pills" この曲は彼のアルバム『Trading snakeoil for wolftickets 』(2002年 )に収められ、映画『Catch and Release 』のサウンドトラック盤(2007年 )にも収められている。
映画 [編集 ]
映画が発明されると、サロメは格好の題材とされた。多くはワイルドの戯曲を元にしているが、関連作品は現在までに50作品以上になる。[12]
主なものを以下に列挙する。
- 『サロメ (1910年の映画) 』
- 『サロメ (1918年の映画)
』
テーダ・バーラ 主演。この作品は「原作:フラウィウス・ヨセフス」としている。 - 『サロメ (1923年の映画)
』
アラ・ナジモヴァ 主演 - 『サンセット大通り
』
ビリー・ワイルダー 監督作品(1950年 )。筋とは無関係だが、主人公ノーマ・エズモンドが女優復帰用に自ら執筆した脚本が「サロメ」の改作ものである。 - 『サロメ (1953年の映画)
』
邦題は『情炎の女サロメ 』、リタ・ヘイワース 主演 - 『サロメの季節 』 は、クリストファー・フランク 監督による映画(1984年)。ワイルド作品をもとに、南フランスのコート・ダジュールで18歳の少女が男を翻弄するひと夏を描いたもの。
- 『サロメ (ケン・ラッセル作品)
』
ケン・ラッセル 監督(1988年 )、原題は"Salome's Last Dance"。ワイルドやアルフレッド・ダグラス等が登場し、映画内で「サロメ劇」を上演する。 - 『サロメ (2002年の映画)
』
カルロス・サウラ 監督作品。フラメンコ ダンスを使っている
アニメーション作品 [編集 ]
- 『低地のサロメ
』
クリスティアン・ツァグラー 作の短編。シュトラウスによるオペラの音楽を使用している。
脚注 [編集 ]
- ^ この部分の記述は新約聖書学 でほぼ定説となっている二資料仮説 を前提としている
- ^ 「マルコによる福音書」(15:40)で、イエスの十字架刑の目撃者の一人として記される「サロメ」は全くの別人。(彼女については、サロメ (イエスの弟子) を参照のこと)。
- ^ 聖書からの引用は、岩波版(佐藤研 訳)により、〔 〕内は原文にない訳者の補足である。但し、部分引用であることなどから一部に引用者による改変がある。また最新版では「バプティスマ」に「浸礼」の訳語をあてているが煩雑さを避けるため、ここでは初期の「洗礼」を使用した
- ^ ここでも多くを訳者による原注によっている
- ^ 現代では著者不明とされる福音書記者を便宜的に伝統の名前で呼ぶ。マタイ、ルカも同様
- ^ 洗礼者ヨハネを師と仰ぐ「ヨハネ教団」は1世紀末まで存続しており、福音書が書かれた時期(1世紀の後半)には原始キリスト教会と対立関係にあったことに由来する。なお、マタイにもそれは顕著である
- ^ 訳文は執筆者による試訳。さしあたって、W. Whiston translation at Project Gutenberg に依ったが、不適切な加筆には変更がある。
- ^ ヘロデ大王には解っているだけで10人の妻がいて、少なくとも息子が10人、娘が5人いる。その中には同名の者も多く、文献により多少の違いが見られる。
- ^ 列挙に当たっては英語版Wikipediaの対応項目を参考にした。
- ^ 初版本:ハードカヴァー ISBN 0553057758 、ペーパーバック ISBN 0553289691 いずれも Bantam Books
- ^ 現在入手できるのは、新潮文庫版。2003年 ISBN 410118111X
- ^ IMDB のリストによる。但し、これらの中にはシュトラウスのオペラの映像作品など狭義の「映画」とはいえないものも含まれている。
関連項目 [編集 ]
参考文献 [編集 ]
- 『新約聖書』