英国14世紀の中世の古典であるが、実に生き生きとしているのである。私はブリューゲルの庶民の活気にみちた絵画を想起した。
チョーサーはイタリアにも行っており、初期イタリア・ルネサンスの息吹に触れているのである。そうすると、ルネサンスとは何か、という問いが起きるので ある。歴史家のホイジンガが『中世の秋』で、フランスやオランダの中世末期(14世紀~15世紀)の豊かな文化的生活を描いている。
私が言いたいのは、チョーサーの作品は十分、ルネサンス的であるということである。ルネサンスの定義は難しい問題であるが、直感ではそうなるのである。
中世の民衆生活は、バフチンがカーニヴァル論を説いたことからも敷延して、ルネサンス的ではなかったのか、という考えが浮かぶのである。教会では、キリ スト教が説かれていたが、中世の民衆はもっと、楽天的な生活をしていたと思われる。そう、チョーサーの作品を読んで感じるのは、いわば、八百万の神々のよ うな世界であるということである。ギリシア・ローマ神話が生きている多神教の世界である。私見では、シェイクスピアよりも楽しい文学作品である。
以下のサイトは『カンタベリー物語』のバーン=ジョーンズによる木版画のイラストである。
http://cgfa.sunsite.dk/burne/p-burne19.htm
次の油彩画と比べるといいだろう。
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/43/Burne-jones-love-among-the-ruins.jpg
私見では、バーン=ジョーンズのデッサン力が、彩色することで、失せてしまうように思える。
端的に言えば、色彩感が凡庸だと思うのである。つまり、週刊誌の凡庸なグラビア写真のようである。それに対して、木版画においては、表面のけばけばしさがなくなり、心眼が表現されて、優れた静物画的なトーン・気韻を生んでいると思うのである。
岩波文庫の『カンタベリー物語』にバーン=ジョーンズの挿絵があるので、それを見られるといいだろう。私の印象では、油彩画のバーン=ジョーンズは、凡庸な画家であるが、木版画では非凡な挿絵画家である。
木版画では、気取りがなくなり、線描がみずみずしい感銘が与えるのである。そう、油彩画では、自己顕示欲があまりに出てしまっていると思う。
さて、以上でバーン=ジョーンズの作品における「ズレ」、差異、亀裂、等を指摘したのであるが、これは、文学批評ではよく知られたポイントである。(思 うに、作者の意識と無意識のズレ・差異を最初に指摘したのは、ウィリアム・ブレイクのミルトン批評ではないだろうか。エンゲルスもバルザックの文学作品に おけるズレを指摘している。この、いわば、差異的批評を駆使しているのが、『古典アメリカ文学研究』のD.H.ロレンスである。)
ここで、バーン=ジョーンズの作品のズレを哲学的問題に転換すると、先に課題としてあげていた感覚美と精神美の問題に関係すると思われる。即ち、油彩画のバーン=ジョーンズは感覚美を表現し、木版画の作家は精神美を表現したように言えるのではないだろうか。
結局、人間(作家)における心的空間において、通常は現象的志向性と魂的志向性が混淆している。換言すると、同一性志向性と差異(共振)志向性である。
前者は当然、世俗的価値であり、後者は霊的価値である。バーン=ジョーンズにおいては、想像だが、画家として成功を収めようとして、油彩画においては、 世俗的価値が作用してしまったのではないだろうか。しかし、木版画においては、作家本来の差異志向性である霊的価値が表現されたのではないのか。
どうも、作家の心の二面性・二重性を考えると、彼の作品を的確に解明できそうである。つまり、油彩画においても、なにか夢想的な要素、ロマンティックな 要素があるが、他面、写実的である。このロマン主義と写実主義が彼の二重性であろう。そして、油彩画においては、後者が強くが現われてしまい、前者を十分 に発展できなかったように思える。
しかし、木版画においては、ロマン主義的要素が洗練されて霊的表現となっているように思えるのである。外観に引き摺られなくなって、内面の霊性が表現されているように思えるのである。
ここで、感覚美と精神美の問題に戻ると、感覚美とは自我に関係し、精神美とは自己に関係すると言えよう。
感覚美である外観美が今日一般に重視されているが、それは、自我的欲望に関係すると言えよう。それは、精神美、霊的美を疎かにするだろう。プラトニック・シナジー理論から言えば、精神美が優位であり、感覚美は劣位なのである。
参考:バーン=ジョーンズ
http://www.b-sou.com/palf-BurneJones.htm
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カンタベリー物語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カンタベリー物語(The Canterbury Tales )は、14世紀 にイギリス の詩人 、ジェフリー・チョーサー によって書かれた物語集である。内容・作品構造
聖トマス・ベケット 廟があるカンタベリー大聖堂 へ の巡礼の途中、たまたま宿で同宿した様々の身分・職業の人間が、旅の退屈しのぎに自分の知っている物語を順に語っていくという形をとっており、「枠物語」 (frame story)という形を取っている。また物語は、チョーサー自らが創作したオリジナルと、人づてに聞いたと思われるもの、あるいは書物から得たと思われる ものが存在する。
[編集 ] 日本語訳
日本語訳には、桝井迪夫 訳『完訳カンタベリー物語』(岩波文庫 )などがある。
[編集 ] 映画
- 映画「カンタベリー物語」(1971年)・・・ピエル・パオロ・パゾリーニ 監督作品。ベルリン国際映画祭 金熊賞。
[編集 ] この物語が出てくる作品
- 映画「セブン 」で、モーガン・フリーマン 扮するサマセット刑事の愛読書の1つとして登場。
- 映画「ロック・ユー! 」にはチョーサー自身が登場し、これから執筆するカンタベリー物語についてほんの少し触れられている。
[編集 ] 関連項目
カテゴリ : イギリスの詩**********************************************
ジェフレイ・チョーサー
『カンタベリ物語』上下
1972・1987 筑摩書房
Geoffrey Chaucer : The Cantaerbury Tales 1387~1400
西脇順三郎 訳
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0232.html
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カンタベリー物語(1971) |
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The Canterbury Tales
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![Canterbury Tales Woodcut 1484](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fupload.wikimedia.org%2Fwikipedia%2Fcommons%2F1%2F1c%2FCanterbury_Tales.png)
The Canterbury Tales is a collection of stories written by Geoffrey Chaucer in the 14th century (two of them in prose , the rest in verse ). The tales, some of which are originals and others not, are contained inside a frame tale and told by a collection of pilgrims on a pilgrimage from Southwark to Canterbury to visit the shrine of Saint Thomas Becket at Canterbury Cathedral .[1] The Canterbury Tales are written in Middle English . Although the tales are considered to be his magnum opus , some believe the structure of the tales is indebted to the works of The Decameron , which Chaucer is said to have read on an earlier visit to Italy .
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Canterbury_Tales
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ルネサンス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ルネサンス(仏 : Renaissance 直訳すると「再生」)とは、一義的には、14世紀 - 16世紀 にイタリア を中心に西欧 で興った古典 古代の文化を復興 しようとする歴史的・文化的諸運動を指す。また、これらが興った時代(14世紀 - 16世紀)を指すこともある。
イタリア・ルネサンス以前の時代にも古代文化の復興運動があったとして「○○ルネサンス」と呼ぶこともある。9世紀フランク王国 の「カロリング朝ルネサンス 」や、10世紀東ローマ帝国 の「マケドニア朝ルネサンス 」および帝国末期の「パレオロゴス朝ルネサンス 」、西ヨーロッパ における「12世紀ルネサンス 」などがそうであり、これらについてはそれぞれの項目で述べる。
日本では長らく文芸復興と訳されてきたが、(文芸のみでなく広義に使われるため)現在では余り使われない。ルネッサンスとも表記され、通俗的に「復興」「再生」を指す言葉として用いられている場合、例えばコスメティック・ルネッサンス 、あるいはカルロス・ゴーン 著『ルネッサンス』などは、なぜかルネッサンスと表記されることが多い。しかし、現在の歴史学、美術史等ではルネサンスという表記が一般的である。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%8D%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%B9