『E・M・フォースターのためらい』を読んで 2007/05/04

『E・M・フォースターのためらい』の詳細



 著者の山本洋子先生は1977~78年、英国ケンブリッジ大学にvisiting scholarとして留学の体験、さらに『異文化との出会い』<共著>等々の業績もあり、E・M・フォースターについて、お書きになる最適任者の1人であ ると思う。従って本書は、伊とうはるこさんの見事な(儚さと永遠をイメージし得る)装丁も相まって、江湖の多数が座右に常置すべき名著と思っている。ま た、フォースターは、ナチズムや共産主義、機械文明を批判等の講演、著述でも著名のようではあるが、それはひとまずおいて、後述する内容でも明白なよう に、彼が真の文学・芸術の使徒であったと、まずもって指摘しておきたい。

 ロンドンで建築家の子として生まれたフォースターは、ケンブリッジ大学キングス・カレッジの学生だった1901年、ケンブリッジ使徒会 (Cambridge Apostles)の名で知られる団体に参加した。メンバーの多くは、続いてブルームズベリー・グループ(Bloomsbury Group)として知られた文学者団体の構成員となり、フォースターは、ジーグフリード・サスーン(Siegfried Sassoon)、J・R・アッカーリー(J. R.Ackerley)、フォレスト・レイド(Forrest Reid)等と共にブルームズベリー・グループに参加し、文学修行上、更に大きな礎を築き得たと思う。

 大学卒業後、フォースターは古典文学者のG・L・ディキンソン(Goldsworthy Lowes Dickinson)と共に多くの外国を旅した。最初はイタリアやギリシアを訪れ、その時の体験をもとに『天使も踏むを恐れるところ』や『眺めのいい部 屋』が執筆された。1914年頃からはエジプト、ドイツ、インドを旅した。
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