「西洋古典文学」(6月16日)

ホメロス問題」とテクスト伝承

 すでに何度か言ったように,ホメロスの作品は紀元前8世紀の作品と考えられ,この時代は以前用いられていたギリシア語を表記する文字,いわゆる「線文字B」が使われなくなって数百年が経ち,フェニキア文字の影響で出来たと言われる「ギリシア文字」が使われる直前のことと考えられている,ギリシア人が文字を使用していなかった時代の作品とされている.

 「口誦詩」(oral poetry)という形で,吟遊詩人(アオイドスまたはラプソドス)によって伝えられた多くの伝承を集大成したのがホメロスで,その作品が『イリアス』, 『オデュッセイア』だとすれば,それを流布させたの吟遊詩人で,これもまた「口誦詩」として伝わったと考えられる.


http://www.littera.waseda.ac.jp/faculty/tokuyam/03clas10.html