前章までは心構えや装備などお話しましたが、では実際に
石を目にしたときにまず戸惑うのが、「これって何ていう
石?」・・・ですよね。^^;
あたりまえですが、その石が何なのかがある程度見分けが
つかなければ採集自体が成り立たないでしょう。 鉱物を
見分ける判断基準として「結晶」というものを頭に入れて
おく必要があるです。
実は、「鉱物の結晶について」というのをこの入門編より
かなり前に書き始めていまして・・・(汗
それを使おうかと思ったものの、入門としては少々面倒な
レベルな気がしますので、それとは別に「鉱物を見分ける
為の結晶というもの」について、入門編らしくできるだけ
わかりやすい説明をしてみたいと思います。 鉱物採集と
いう趣味をするのならば結構重要性の高い情報ですので、
少しずつでもいいので理解をしていって下さい。
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「水晶」と「石英」は、言葉が違うだけで同じ鉱物です。
(昔は逆でしたが)一般的に、結晶した物を水晶、そうで
無いものを石英と呼んでいます。 では、同じものが結晶
したりしなかったりするのは何故でしょう?
「四角スイカ」ってご存知でしょうか?
スイカがまだ小さいうちに正方形の箱で囲っておきます。
成長が進んで大きくなると、その箱の形になってしまうと
いう物です。 鉱物の成長も同様の事が言える訳ですが、
スイカの場合は通常が地上という自由な形になれる環境で
あるのに対し、鉱物は大抵地中という「周囲が自由に成長
させてくれない」場合が多いのです。
地下深くの高温・高圧環境では様々な鉱物の材料(元素)が
コロイド状になっていて、それが地表付近まで押し上げられ
てくると冷えて塊になってきます。 この時、スイカの場合
とは逆で周囲には他の岩石や鉱物があって本来の形に成長が
できません。 しかし、押し上げられ固まってくると岩石の
中に亀裂やガスだまり、熱水の入る隙間等が部分的にできる
ことがあり、そこが鉱物の理想的な形、つまり結晶ができる
空間になる訳です。
結晶の形は、基本的に鉱物の種類によって違います。
が、1種が必ず1つの形になる訳ではありません。 中には
1種で数十以上もの結晶形になる物もあるので、別の鉱物と
同様の結晶の形になる物もありますね。 それでも、定番の
形とかがありますのでそれらを覚えておくと良いと思います。
良く知られている鉱物の結晶をいくつか例を挙げてみますね。
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・水晶(クォーツ)
まずは水晶。 基本的には六角柱で、先が尖っています。
時に両端が尖っていたり柱が薄い板状になったりする事も
ありますが、板状を上から見ると六角形をしています。
個体差はありますが柱面と尖っている面の境目に小さな面
を伴っている事が多いです。 あとで少し説明をしますが
これらの面が隣り合う角度は鉱物種によって一定です。
柱面には、柱が伸びる方向に対して垂直方向に「条線」と
呼ばれる成長線が無数に入ることが多いです。

水晶の群晶。 そそり立っている結晶には条線は殆ど見られないが、右下にある
柱面には、柱の延びる方向に垂直に条線が無数に入っているのが見える。 国内産
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・黄鉄鉱(パイライト)
硫化鉄という構成で良く見られる鉱物のひとつです。
理想形はサイコロみたいな六面体なのですが、角が斜めに
切れていたりルーズになっていたりします。 淡い金色を
しているので金と良く間違われます。

黄鉄鉱の理想的な結晶。 国内ではこんなのが出るのはほぼ数ミリ程度。 他にも
コロッとした形になったり、表面に条線があったり酸化して色合いが変わったりする
ので、いろいろ見て少しずつ覚えるようにしていくと良いでしょう。 スペイン産
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・電気石(トルマリン)
水晶と同様に六角柱状になるのですが、先端の尖りはほぼ
無かったり、あっても水晶程鋭くはありません。 また、
柱の角は1つおきに角度が変わる事があり、その為か頭の
尖りは3方向の錐面になります。 柱の上方向から見ると
ベンツマークみたいに見えるのが特徴です。
水晶の条線は柱の成長方向に対して垂直だと書きましたが
トルマリンは平行に入るのが見分けるポイントとなります。

苦土電気石かも知れない(だといいな)鉄電気石。(笑)
水晶とは違い、柱の延びる方向に平行に条線が見える。 上記の通り柱の角が
1つおきに「広く/狭く」なる為、上から見ると三角柱に近い形になる事があるので
曲面のように見える物も。 勿論ちゃんとした六角柱状の物もあります。 国内産
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・方解石(カルサイト)
・・・コイツだけは紹介したくなかった(笑)
水晶やパイライト等と並んで良く見られる鉱物なのですが、
非常にいろんな結晶形になる事が知られています。 昔の
学者さんの調査では200以上の形状が報告されたなんて
言われています。 良く見られる結晶形としても犬牙状・
釘頭状・六角柱状・直方体状・斜方体状・三角錐状・・・
とにかく結晶形だけで見分けにくい代表選手ですね。(笑)
硬度や色、質感や劈開がかなり特徴的ですので、それらと
併せて判断することが多いです。

三角錐状結晶・・・だと思う(笑)
200以上も結晶形を言われたら、結構ちょっとの角度や厚みの違いで別の
結晶形だという事に。 画像のものも、頭頂部や正面の小さい面を拡張して
上から潰すようにすると陣笠状か釘頭状になるのかなと。 国内産
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・柘榴石(ざくろいし)(ガーネット)
12面体や24面体が一般的で、コロッとした赤い結晶が無数に
集まった物を見て、「ザクロの実のようだ」という事で和名が
ついたようです。 こちらは結晶形はそれほど極端になる例は
少ないですが、含まれる元素で種類が変わります。 つまり
ガーネットというのはあくまでグループ名で、鉱物種としては
複数あるです。 この石の場合は、結晶の形の次に色が種類の
判断基準になるのかと思います。 赤以外にも緑・オレンジ・
茶色・黒・白・レアですが青なども出ています。

オレンジ色のガーネット。 マンガンを含む「スペサルティン」という種類になる。
もっと分かりやすい画像もあるが、ネーミング的にこんなのが判りやすいかと(笑)
小さな24面体結晶の群晶になっている。 国内産
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・黄玉(トパーズ)
菱形四角柱状が一般的な形です。 水晶やトルマリンに比べると
柱が長く伸びるものは比較的少ない気がします。 端部の尖りは
頂点が柱の中心よりズレたり、大きな2つの面で山形になったり、
細かな突起が複数集まったりといろんなタイプがあります。
トパーズもトルマリンと同様に、条線が柱面に縦に入りますね。
この記事でもお話ししましたが、もし端部が平らになっていたら
それは結晶面ではなく劈開面である可能性が高いです。

トパーズの結晶。 柱はざっくり菱形になる。 一番左は細かい突起の集合、中央の2つは
頂点が右にズレている。 全ての結晶の下の端部は劈開で割れた面なので平らになっている。
国内産
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・蛍石(フローライト)
八面体・または六面体が理想的な形状です。
しかし微小な結晶が集まって丸みを帯びたり、さらにそれが
集まってモコモコしたようにもなるです。 前出の方解石と
同様に硬度や劈開、色、質感などと合わせて判断できます。
また、多くの産地の物はUVで蛍光するのが特徴ですね。

右上の淡黄緑の結晶。 ピラミッドのような形に見えるが、八面体はピラミッド2個の
底面同士を合わせたような形なので、これは上半分が見えてた状態。左の黒っぽいのは
煙水晶で、斜め上からなので分かりづらいがちゃんと六角柱状している。 蛍石の中に
直線的に見える模様は劈開によるひび(クラック)で、これも重要な判断材料となる。
残念ながらこの産地の蛍石は蛍光しないとの事。 国内産
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種類は適当に示しましたが、ほかの種類もネット等で調べれば
判るでしょう。 繰り返しますが、結晶の形だけで種類が確定
出来る訳ではありません。 それでも「普通に出来やすい形」
を知っておく事は重要だろうと思います。 また、同じ鉱物の
結晶が2つ以上、部分的に重なっている物を「双晶」と呼び、
複雑な形になります。 これも種類によって良く知られている
タイプがありますので、ネット等で調べてみて下さい。

水晶の双晶。 板状の2つの結晶が90度に満たない角度で結合している。 最初に
日本で見つかり報告された為「日本式双晶(Japanese Law Twin)」と呼ばれる。
その名の通り国内でそこそこ出るが、勿論海外でも産出する。 これは国内産

煙水晶の先端部。 1つの結晶に見えるが、これは「2つの結晶が同じ六角柱の中で
60度ズレた状態で重なった双晶」で、ドフィーネ双晶と呼ばれるもの。 判断する
ポイントは、柱面と尖った錐面の間にある面を見ると、単結晶であれば1面おきに
出るはずの面が連続して出ている事。 似た重なり方で逆タイプのブラジル双晶と
いうのもあるです。 これも国内産
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結晶の形がなぜ種類で(ある程度)決まるのでしょう・・・。
その昔、欧米でいろんな場所の水晶を採集していた学者さんが
ふと思いついたのが「ひょっとしたら、各産地によって特有の
形状差があるのではないか」と考えて各産地の水晶のデータを
とったのですが、どこの水晶も「隣りあう面の角度はそれぞれ
同じになる」という結論になりました。 これは現代科学では
分子の結晶構造に依存すると判るのですが、当時では「これは
自然の物だから、神の御意思なのだろう」と思ったそうです。
つまり、これは水晶に限らず鉱物が結晶となる際の決まり事の
ようなものだと思ってもらって差し支えないでしょう。
という訳で、結晶の形は鉱物種によってほぼ決まっています。
極端な例外も勿論ありますが、この入門編ではひとまず除外
しておきましょう。 前章で「~産の~鉱」などと検索して
参考にできるとは書きましたが、中にはどう見ても間違った
物や研磨した物、人工的に作られた物を出しているサイトも
多々ありますので、第1章でもお伝えしたように信頼できる
知識を持ったベテラン・先輩等を捕まえておいて、遠慮なく
聞いてみましょう。
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私は、某SNSで知り合った石好きさん達と毎週手持ちの物や
ネットにある画像を見せ合っていろいろ雑談していますが、
中には「これって何でしょう?」「これは~鉱という説明が
されてますが、どう思いますか?」みたいなクイズというか
検討会みたいになる事が多々あります。 これは大変有意義
で、基本的な結晶形だけでなく「こんな形でも出るんだ」と
いうケーススタディになっていると思います。 勿論ですが
定番の綺麗な結晶も見せ合って楽しんでいます。
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結晶についてのもう少し突っ込んだ話は、最初に書いた通り
書きかけている記事でしようかと思っています。 入門編と
しては大体お伝えしたい事は書けたかと思いますが、もしも
知りたい事・判らない事などがある方は遠慮なくコメントを
下さいますよう。 また、伝え忘れを思いついたら第4章が
出現します。(笑)
それではまた。