母の手料理


家に着くと、既に料理が食卓に並べられていた。母は暖かい牛乳を差し出して、
「おばあちゃんが帰ってきたから、ちょっと待っていてね。みんなで食べようね。」



と言った。僕達がAさんの家に行っている間に帰ってきたようだ。しばらくすると、
着物から着替えてきた祖母が台所に入ってきた。
「お義母さん、お食事の用意できていますので、どうぞお掛けになってください。」
その母の言葉を遮るように祖母は、
あなたの作ったものが食べられますか!と言って、母の作った料理を全て残飯の入ったごみ袋の中に捨てていきました。
「すいません…」
さっきまでニコニコしていた母の顔から一気に血の気が引いていきました。
俺は(どうしよう!どうしよう!)とただただ混乱していました。
「バカ!」
突然、姉が叫んで、祖母からごみ袋をひったくりました。
仁王立ちになった姉は、祖母をにらみつけながら、ごみ袋から
母の作ったご飯を手ですくって食べ始めました。
「私は… 私は…」
後の言葉が出てこずに、目から涙をボロボロとこぼしながら、姉は食べました。
小さな肩を震わせて、必死に強がって…
そんな姉を見て、私も大泣きしながらごみ袋からハンバーグを掴み取って食べました。
「もう、いいのよ。やめて。二人とも。いいのよ。お願いだから…」
泣きながら止める母の声も無視して、私達はむさぼり続けました



最近素直に気持ちを伝えることが、どんなに難しいことか痛感しまんした。



人を本当に好きになるというのは、自分でもよく理解できないくらいのことなのかもしれないな。



自分がどんなに口下手でも、相手が雰囲気を感じとってくれたり、今までの関係から伝わってくれればいいんだな。

無論、口が上手ければにこしとことはないが。




僕は今大人の階段のぼっています。