「寮の帰り道で、泣いていた」


「良い高校に行け」

「良い大学に行け」

「良い会社に入れ」


小さい頃から、

それが正解だと

何度も聞かされて育ちました。


大手企業グループに入れた時、

正直、少しだけ

安心したのを覚えています。


やっと

その“正解”のレールに

乗れた気がして。


でも、

配属されたのは

都会育ちの自分には

まったく馴染みのない場所でした。


会社の寮生活が始まりました。


六畳一間。

自炊もできない環境。

厳しいルール。

集団での生活。


もともと

心から入りたかった会社でもない。


「ここまで来たんだから」

「我慢すれば慣れる」


そう言い聞かせながら、

毎日を過ごしていました。


でも正直、

しんどかった。


とある冬の日、

仕事終わりの帰り道。


理由ははっきり覚えていません。

ただ、

急に気持ちが溢れてきて、

歩きながら

泣いていました。


「良い高校、良い大学、

良い会社に入ったはずなのに、

なんでこんな気持ちなんだろう」


仕事ができないからでも、

怒られたからでもない。


自分の人生を

生きていない感覚が、

一気に押し寄せた。


あの時感じたのは、

失敗でも不安でもなく、


「このまま年を重ねていいのか」

という、

どうしようもない違和感でした。