ファンダメンタルズ分析で米国の雇用統計を見るとき、
非農業部門雇用者数(NFP)と並んで重要なのが、失業率です。
ニュースでもよく取り上げられるため、名前は知っていても、
「失業率が下がれば必ず良いのか?」
「どこを基準に見ればよいのか?」
と迷う人は多いと思います。
実は失業率は、数字だけをそのまま見るのではなく、景気や労働参加の状況とあわせて考えることが大切です。
今回は、ファンダメンタルズ分析の基本として、失業率の意味や注目される理由、見るときのポイントをわかりやすく整理します。
失業率とは
失業率とは、簡単にいうと、
働く意思があり、仕事を探しているのに職に就けていない人の割合です。
つまり、ただ仕事をしていない人全員を指すのではありません。
「働きたい」「仕事を探している」という条件がある人の中で、職が見つかっていない人がどれくらいいるかを見る指標です。
このため、景気が悪化して企業の採用が弱くなると、失業率は上がりやすくなります。
逆に、景気が強く雇用環境が良いと、失業率は下がりやすくなります。
なぜ失業率が重要なのか
失業率が重要視される理由は、景気の強さや雇用環境を示す代表的な指標だからです。
失業率が低いということは、一般的には企業が人を雇いやすく、働きたい人も仕事を見つけやすい状態と考えられます。
つまり、経済が比較的しっかり回っているサインとして受け止められやすいです。
また、米国ではFRBが金融政策を考えるうえでも雇用の状況を重視しています。
そのため、失業率の変化は、
- 景気が強いのか弱いのか
- 利上げや利下げの方向感がどうなりそうか
- ドルや金利がどう動きやすいか
を考える材料になります。
失業率が低ければ必ず良いわけではない
失業率は低いほど良い、と単純に考えたくなりますが、実際にはそこまで単純ではありません。
なぜなら、失業率には**「職探しをあきらめた人」は含まれない**からです。
たとえば景気が悪くなり、仕事がなかなか見つからない状況が続くと、求職活動そのものをやめてしまう人が出てきます。
すると、その人たちは失業者としてカウントされなくなります。
その結果、
- 雇用が増えていないのに
- 失業率だけは下がる
ということも起こり得ます。
つまり失業率は大事な指標ですが、数字だけで景気が良いと決めつけないことが大切です。
労働参加率とあわせて見ることが重要
失業率を見るときに一緒に確認したいのが、労働参加率です。
労働参加率とは、
働いている人と仕事を探している人を合わせた人数が、全人口に占める割合
を示すものです。
この数字を見ることで、どれくらいの人が労働市場に参加しているのかが分かります。
たとえば失業率が低下していても、同時に労働参加率が下がっているなら、
「本当に雇用が改善したのか」
それとも
「仕事探しをやめた人が増えただけなのか」
を慎重に考える必要があります。
そのため、失業率は単独で見るよりも、労働参加率とセットで見る方が実態をつかみやすいです。
3%台は完全雇用に近い目安
米国の失業率では、一般的に3%台はかなり低い水準と見られ、
完全雇用に近い状態と受け止められることが多いです。
完全雇用とは、「失業者がゼロ」という意味ではありません。
転職活動中の人や、仕事を探し始めたばかりの人など、一定の失業はどうしても存在します。
そのうえで、景気の弱さによる大きな失業があまり見られない状態を、実質的な完全雇用に近いと考えます。
そのため、失業率が3%前後で推移しているときは、雇用市場がかなり引き締まっていると解釈されやすいです。
サームルールとは何か
失業率を見るうえで、景気後退のサインとしてよく知られている考え方の一つに、サームルールがあります。
サームルールとは、
直近の一定期間で最も低かった失業率から、失業率が0.5%以上上昇すると、景気後退入りの可能性が高まる
という考え方です。
これは、景気が悪化し始めると失業率がじわじわではなく、比較的はっきり上がってくることが多い、という経験則に基づいています。
たとえば、失業率がしばらく3.4%前後で推移していたのに、その後3.9%以上まで上昇してきた場合、
「雇用市場に緩みが出てきているのではないか」
「景気後退の入り口かもしれない」
と警戒されやすくなります。
なぜサームルールが注目されるのか
サームルールが注目されるのは、景気後退の早期警戒シグナルとして比較的分かりやすいからです。
景気後退は、最初から誰の目にも明らかに見えるわけではありません。
株価や金利、消費、企業業績など、さまざまなデータを総合して判断する必要があります。
その中で失業率は、多くの人にとって理解しやすく、しかも景気悪化が数字に表れやすい指標です。
特に、「過去の最低水準から0.5%上昇」という形にすると、相場参加者も変化を把握しやすくなります。
そのため、ファンダメンタルズ分析では、失業率の絶対水準だけでなく、
底からどれくらい上がってきたか
も重要な見方になります。
失業率を見るときの注意点
失業率は非常に重要ですが、これも単独で判断しすぎないことが大切です。
たとえば、失業率が低くても、
- 非農業部門雇用者数が弱い
- 労働参加率が下がっている
- 平均時給の伸びが鈍い
といった場合は、見た目ほど強い内容ではないことがあります。
逆に、失業率が少し上がっても、労働参加率が改善しているなら、
「新しく仕事を探し始めた人が増えた結果」と考えられることもあります。
つまり失業率を見るときは、
NFP、労働参加率、賃金データと一緒に全体像で判断すること
が大切です。
FXではどう活かせばよいのか
FXで失業率を見るときは、
失業率の低下=景気が底堅い可能性
失業率の上昇=景気の減速やFRBのスタンス変化を意識
という流れで考えると分かりやすいです。
たとえば失業率が予想より低ければ、
- 雇用市場はまだ強い
- 景気の底堅さが意識される
- FRBがすぐには利下げしにくいかもしれない
- ドル買いにつながりやすい
という見方になりやすいです。
一方で、失業率が予想より上がり、さらにサームルールを意識する水準に近づいている場合は、
- 景気減速懸念が高まる
- 利下げ期待が強まる
- ドル売り要因になりやすい
といった反応が出やすくなります。
まとめ
失業率とは、
働く意思があり仕事を探しているのに、職に就けていない人の割合を示す重要指標です。
ポイントを整理すると、次のようになります。
- 景気や雇用環境を見る基本指標
- 3%台は完全雇用に近い目安
- ただし、低ければ必ず良いとは限らない
- 職探しをやめた人は失業率に含まれない
- 労働参加率とあわせて見ることが重要
- 直近の最低失業率から0.5%上昇すると、サームルールとして景気後退懸念が強まりやすい
失業率はとても有名な数字ですが、
本当に大切なのは、その数字の裏側にある雇用の質や労働市場の実態を見ることです。
ファンダメンタルズ分析では、
「失業率は低いか高いか」だけでなく、
「なぜそうなっているのか」
まで考えられるようになると、相場の見え方がかなり変わってきます。