懐かしい時代が妙なリアル感を持って描かれていく。
日常の描写につい、読み進めることを止めてしまう。
呼び覚まされた自分の記憶を辿ってしまうからだ。
雑誌「ホットドッグプレス」や「オリーブ」。
オリーブを読んで東京に憧れ、オリーブで見たアニエス・ベーの白シャツが欲しくてたまらなくなったこと。
六本木のディスコ・ヴェルファーレや、クラブのガスパニック。
ヴェルファーレはイケてないサラリーマンがイケてる顔して出入りする感じが好きではなかった。
ガスパニックは早い時間にはワンドリンク300円だったかな?ハッピーアワーがあって、ペイデイにはブラザーたちで溢れかえった。
そうだ、時代はMDの時代。ジャミロクワイが大流行りした。
六本木のWAVEに行ったのは、いつが最後だったろう……
と、こんな風にあの頃の何かを思い出しては考え事をしたせいで、“一気読み”なんて出来なかった。
全体に何となく不安定な感じが付き纏うのは、あの時代の空気感だったのか、私自身がまだ不安定だったからなのか。
懐かしさの中で途方に暮れた、不思議な一冊。
「ボクたちはみんな大人になれなかった」