若者は短縮してリスカとか言っているが、日本語で書くと自傷行為である。
当店にも自傷行為のひどい女性が何人かいた事がある。
リストカットをする人の事を理解していない人は、「寂しいから相手にされたいのではないか」と結論付けている人も多いが、そんな簡単なものではないことを私は知っている。
リストカットは心の病気のひとつの行動であり、原因はその心にある。
精神的な病であると思う。
当店でリストカットを辞められない女性数人と深く関わってみたがすべての女性に共通して言える事は幼少時代の得意な親子関係にある。
親から性的虐待を受けていた女性。
親から完全に見放されたと思わせる環境を経験した女性。
親からの過剰な期待に甘えることを許されなかった女性。
女性によって環境はそれぞれだが、「親の愛をもらって生きた」と思っていない女性が多い。
それらの女性の中には分裂性や解離性人格障害の症状を顕著に見せる女性も多くいた。
「S子の話」
あるとき、「親からの過剰な期待に甘えることを許されなかった女性」のお母さんに会いに行くことにした。
東京の一人暮らしの家の中で、自分を傷つけ暗黒の中をさまよっているわが子の事は何も知らなかった。
事情を知ったお母さんはその場で泣き崩れた。
「実家に娘さんを迎え入れて、子供の時に甘えられなかった分を今からいっぱい甘えさせてやってください」と頼んだら泣きながらこころよく承諾してくれた。
本人も、晴れやかな笑顔でうれし涙を流して「オーナーありがとう。これからは実家でいっぱい甘えてみる」とそのまま実家に残ることを希望した。
良かった。
お店のオーナーという立場なのに、お店の人気嬢をクビにしているにも関わらず、とても嬉しかった。
三ヶ月後。
突然大きなトランクを持って私の家に訪ねてきた。
「少しの間泊めて下さい。そして、働かせて下さい」
と頼まれて困惑した。
「いっぱい甘えたから、たまには気晴らしに外にでてみようかと思ったの。」
「お世話になったオーナーのところに遊びにきただけなの」
「時間あるから今後の為に少しお金も稼ぎたいの」
そんな事を言われて無下に断ることもできず、快く受け入れた。
そしてその数日後、その女性は私の留守の間に私の家で、今まで以上のリストカットをした。
その女性とあ母さんの溝は何も埋まってなかったのだ。
実家に帰ったその女性は、結局のところお母さんの不自然な対応に息苦しくなって逃げ出していた。
その娘を探すわけでもなく、解放されたのごとく放置しているお母さんがいた。
甘えることの難しさを改めて心に刻んでしまっただけかもしれない。
左腕に見るも無残な傷跡を残してしまった女性は、お店で働く事もできなくなり、「やっぱり実家に帰る」と言い残して私の前から姿を消した。
数日後、ある格安のギャラのデリヘルのお店のホームページに彼女を見つけた。
「大型新人入店」というタイトルで顔出しで出ていた。
左腕は写らないようにポージングして、寂しげな笑顔の彼女を見て泣いた。