<53回>
おばさま達の噂話のかしまさは、私も病院勤務で経験済みで慣れています。それに話題が正人さんが娘のような女性と結婚したと思われての話ですから、私は気にしませんでした。かえって私の隠れ蓑<みの>になると思ったのです。
それに正人さんの奥さんになるという噂を振りまかれても私には嬉しいぐらいです。
でも、正人さんはおば様方に問い詰められて大変だと思います。
豪華なマンションの社宅に住めても、ブライバシーの話題も会社にそのまま伝わるのですから、隠し事できないと思います。
奥様から正人さんの結婚話になってご主人に伝わり、ご主人が会社にでて話題にすると、あっという間に会社中に正人さんの結婚として知られることは確かです。
正人さん、社宅だけでなく、会社でも私との関係の説明に大わらわだと思います。
なんだか私のために正人さん気の毒に思えるのですが、私にはどうすることもできないことですから、正人さんにお任せにしてと割り切ることにしました。
そして私はミカちゃんのママ役で大わらわだけど、楽しんでいるのです。
お昼は冷蔵庫のうどんで二人で済ませました。
昼からは連れ立って市場に買い物です。
市場のお店を一軒いっけんと覗き込みながら、ミカちゃんと晩のお惣菜探ししていると、ほんとに親子連れでの買い物の主婦になった気分です。
それがお店で品定めしてミカちゃんが<ママ>と連発するものですから、お店のおばさんびっくりしたように私をまじまじ見つめるのです。
見つめらえて怪訝に思って私もおばさんを見たら、
「嬢ちゃんほんとにこのお姉さんはお母さんなの?」
ミカちゃんに尋ねたことでわかりました。
そしたらミカちゃんもすました顔で、「そうだよおばちゃん私のママだよ」と答えるのです。
だから私も否定しません。ミカちゃんに合わして「この子、私の娘です」答えるのです。
「へえ~若いお母さんだね~」
感心して首を振ると、この魚屋さんのおばさん買ったマグロのお刺身以外に、小盛のりのイカのお刺身をサービスしてくれたのです。
「ママ良かったね。イカのお刺身はママと二人で食べようね」
「そうね、パパのお金で買ったものじやないサービスだから、ミカちゃんと食べましょう」
こんな会話ミカちゃんと交わしていると、自分でもママ役が板についてきたと思うぐらいです。
魚屋さんでは勧められて生きのいいぶりの切り身も買いました。
豆腐屋さんで豆腐と油あげを買いました。何に使うか考えていないけど冷蔵庫に入れておけば使い道は出てくるものです。
天ぷら屋さんで足止めててんぷらの盛り合わせを買いました。ほんとは天ぷらのタネを買って台所で揚げて揚げたてを正人さんに食べさせてあげたいのだけど、ミカちゃんが真似して油で火傷でもされたら~思って止めました。
同じことは天ぷらに添えるキャベツはマルを買うと安いのだけど、包丁で私が細く刻むのをミカちゃんに真似されたら?それが心配でビニール入りの刻みキャベツを買ったのです。
なにか私はママ役にこだわりすぎて、心配性なのかも?思ってしまいます。
後は大根です。この時期大根が安いのです。大きいのを一本、まあ、3日は食べられるのを買います。
帰ると早速大きいキッチンで料理にかかります。といっても考えたら出来合いばかりで、ブリ大根を造ることと、みそ汁しないと考えて早速、油揚げと豆腐を入れることに。
<ああ、ネギ買うのを忘れた>
流しの上の戸棚の開きを空けてかき回したら、わかめの袋が見つかりました。これでみそ汁は完成になります。
「ミカちゃんパパやミカちゃんのお茶碗やお皿はママわからないから出してね。二つ同時に持ってはダメよ。落として割ってら大変だからね」
「はぁい~ママ大丈夫だよ」
私の料理の準備を見ていたミカちゃんは、用事を言われていきいきと声出します。
テーブルにミカちゃんの手で並べられた食器、私のブリ大根が煮あがったころ携帯が鳴ります。
正人さんからです。<駅に着きました。ケーキ買うので20分ほどで帰ります>との連絡です。
「ミカちゃん、パパがケーキ買って帰るて~」
「やった~」
歓声をあげるミカちゃんに見守る私は微みます。
インタホーンが鳴って私たちは玄関に飛び出しました。
入ってきた正人さんに二人が声そろえて<お帰りなさい>言ったら、ケーキの箱をぶら下げた正人さん<満面の笑み>とでもいうのでしょうか?嬉しそうな笑顔です。
「只今、ミカ~ママに無理言ってなかったかい?」
「大丈夫ですよ正人さん。ミカちゃん夕食のお手つだいしてくれたのですよ」
「そうだよぱぱ~ミカがテーブルにお皿やお茶碗並べたんだよ」
「そうか、良かった、ミカ賢かったんだね。あきさんありがとう。何か家庭に帰ってきた気分です」
「さあ、玄関で立っていないで、着替えして夕食にしましょう」
「はいはい~」答えながらリビングに入った正人さんは声あげたのです。
「わあ~凄い料理が並んでいる。あきさんこれこそ家庭の料理です。」
「正人さんたら大層なこと言って、一人で覚えた手料理ですよ」
「いや、家族が戻ってきたそんな印象です」
盛んに凄いを連発する正人さんの後ろに回って背広を脱がします。正人さんたら背広脱がされながら、何気ないふうに私のブラウスの胸や背中に手を滑らすのです。
「もう~ミカちゃん見ているでしょう~」
小声でささやいて椅子に座らしてお手拭きを渡します。
それからの食事のにぎやかなこと~。
一人暮らしの私には長い間のつつましい食事から解放された思いでした。
ミカちゃんは食事よりおしゃべりに夢中でした。余程嬉しかったのでしょう。
私は何度も正人さんと顔見合わせて笑顔でうなずきあったものです。
さあ、それから大変なのを私は思いもしませんでした。
「ミカちゃんお風呂入りなさい」
風呂場の湯船を満たしたのを確認して告げたときです。
「ママと一諸に入ろう~」
帰ってきた答えにうろたえました。
考えてみたら、一諸に住むとなればこれが一番の難関なのに気が付いたのです。
まだ幼児のミカちゃんにとってはママと風呂に入ることは当然のことです。
「ミカちゃんはもうなんでもできるでしょう?お風呂も一人で入るの」
言い聞かすけど納得しません。
「嫌だ、ママと一諸に入る。ダメだったらお風呂入らない」
「ミカ!ママの言うこと聞かないなら、ママ帰ってしまうぞ。それでもいいのか?わがまま言うのじゃない」
荒げた声でミカちゃんを叱る正人さんも、わかっているのです。
「だってパパ~ママとお風呂入りたいんだもの~」
泣き声あげるミカちゃんに、なにか可哀そうになってきます。でも、これだけはねと同じ思いは正人さんも同じです。
「じゃママもお風呂場に入って、洗い場でミカちゃんを洗ってあげる。それで辛抱してくれる?」
「うん分かった。いいよ」
ミカちゃんの泣き顔が一度に笑顔に変わります。
「これは考えていなかった。あきさん大丈夫ですか?」
心配そうな表情をしてみせているだけ?正人さんの面白そうなもの言いに、なに考えているのか?勘ぐる私です。
「もう、聞かないでください。」
言って、脱衣場の戸を正人さんの前でぴしゃりと閉めました。
脱衣場でミカちゃんの服を脱がせ、風呂場にミカちゃんを送り込むと、私もショーツとスリップ一枚になって風呂場に入ります。
女装子の心得、こんなこともあるかと私はパンストと下着一式手提げに入れているのでスリップが濡れても大丈夫なのです。
風呂場でミカちゃんの体を洗ってやり、湯船に入れて数を数えさせます。それがミカちゃん、途中で数を数えるのをやめると、湯船からつと手伸ばして私のお乳を濡れたブラウス越しになぞったのです。
「ママのお乳小さいね」
「そうよ、ママはまだ子供産んでいないから小さいの」
どきっとして苦しい答えしたけど、ミカちゃんは納得したようにうなづくけどその小さい手は私の乳房を?いえ乳首の上をなぞり続けるのです。
それがぞくりとした感触を感じさせられるから不思議です。
ミカちゃんが風呂から上がると、体をふいてやり大きいタオルで身体を巻き付けてやり、脱衣場から送り出します。
「ミカちゃん部屋で寝巻を着るの自分でできるでしょう?ママも着替えなければいけないからね」
「うん大丈夫自分でちゃんと着れるよ」
今度は聞き分けがいいのです。
リビングから子供部屋に入るミカちゃん見送っていた時にです。
「あきさんすごくセクシーです。まるで人魚です」
横から声が上がって飛び上がりました。正人さんです。
慌ててスリップ抑えて脱衣場に逃げ込んで戸を閉めようとしたら、正人さんが私について脱衣場に入ってきたのです。
「ダメ正人さんミカちゃんが~」
「大丈夫です、あきさん」
答えながら正人さん後ろ手で脱衣場の戸を閉めたのです。
あっ!と思う間もありません。
口づけされていました。
正人さんの手が濡れたスリップの上から乳房を、ヒップをさすります。
一気に私の血が上がります。
快感が背筋走るのです。
「あきさんここで分かりました」
言葉とともに正人さんの手がスリップ越しに、立ち上がった私の男性のモノを軽く握ってきたのです。
<続く>