私の背中から流れてくる歌声~

 優子さんの唄っているのは<坂本冬美>の唄う<まだ君に恋している>です。

  優子さんの解説では、元唄は<ビリーバンバン>で、作詞・松井五郎 作曲・森 正明 だって~。

 唄が得意でない私なのに、なぜこの唄を覚えているかというと、優子さんが堂島のカラオケ店で唄ったとき変事が起きたからです。

 

 長いカウンターに4人もスタップが居て、カウンター席だけでなく、幾つものテーブルがあってグループで飲んだり、食べたりしながら、ミニ舞台でカラオケできる大きなお店で、由美さんや優子さんと足しげく私も通っているのです。

 

  私がこのお店がお気に入りなのは、勤め帰りのグループや女性グループ、そして若いひとたちなど幅広い客層で、女装の私達もそのなかに溶け込むことできて一諸に楽しめるからです。

 ときたまカウンターに座ると、年配の男性から洋酒がカウンター走ってきたりします。そうかと思うと年配の奥様とマイクの前でデュットしたりするのです。

 

 たまたま私達がその店にいあわせたときのことです。

 母、娘の二人連れが居たのです。

 優子さんがこの<まだ君に恋している>を歌ううちに、その娘さんがテーブルにうつ伏せになって泣き出したのです。

  お母さんがなだめているの見て、分かったのです。優子さんの唄~<まだ君に恋している>を聞くうちに辛い思い出がこみ上げてきたのだと思います。

 坂本冬美が唄うより優子さんの唄はすごく甘く低音で唄うので、感性搔き立てられるようなのです。

 そしてその歌詞 ~

 

 カウンター席に座っている私もまた、さっき別れたばかりの正人さんのこと思い浮かべるのです。

 <~~いつか風が  散らした花も

 季節めぐり     色をつけるよ

 

 また君に恋している いままでよりも深く

 まだ君を好きになれる  心から

 ~~

 正人さんがささやいた言葉~

 浴衣を通した肌の温み~

 <愛している>そのことばに憑りつかれていく~

 

 優子さんの歌う歌声があま~く私のなかに響いてくるのです。

 

 <続く>次回は2月に~