63章 写真集  <62章の続き>

 

 思いだしました。62章の続きです。

 2017年6月です。

 

 このころから私はリュウマチに悩まされていました。

 でも主婦業はするしかないのです。

 

 痛い~痛い~言いながら台所仕事していました。

 妻が気にして<私がする~>言うのですが、脚がだめになってトイレに行くにも私が車椅子から抱き上げる状態の妻ですから、台所に立って洗い物だってできる筈ないのです。

 

 そんな折、娘達二人が揃って来てくれて助かったのです。

 その代わり家じゅうの大掃除です。私には大助かりと思うべきなのですが、困ることもあるのです。

  

 下の娘は妻に似て凄く几帳面で家の内隅々まで整理にかかるのです。

 すると押し入れの隅に押し込んでいる私の女装衣装まで引っ張り出す始末です。

 

 「これお父さん着てるドレス?」

 差し上げて見せたのは前に撮影で着せられた赤いドレスです。

 「若い子が着るような派手な衣装着て恥ずかしくないの?」

 

 呆れた表情です。

 「違いますよ~撮影で着せられた衣装ですよ。貰ったけど着れないから置いてあるだけだから処分してくれていいよ。」

 

 慌てて答えたけど、なにか言い訳みたい口ぶりになってしまいます。

 「それとこれも処分する?お風呂の後でつけるの?」

 言いながら差し出されたのが、真っ黒な妖婦が身に着けるようなセクシーなショーツにブラジャーです。

 

 さすがにああ~声出そうになって~頭の中でフル回転です。

「これ付けて撮影してるの?やめてよそんな破廉恥なこと」

「違いますよ。フレンドさんがくれたのですよ。いくら何でも男がそんなもの身に着けたらおかしい思われますよ。処分するつもりだから捨ててくれたらいいよ」

 

 疑わし気な表情の娘に、何でもないように答えたものです。

 わきの下に汗が出たみたいに冷たい~

 ホントは好奇心で袋から出してみたけど、小さすぎて穿くことできなかったのです。

 

 「それより写真集に載せる写真の選別、女の目線で見てほしいのだけど手伝ってくれるか?」

 「やっぱりに写真集出すの?おかしな写真じゃないでしょうね」

 「見てくれたら分かります」

 

 こういうときは断固として答えないといけないのです。

 この日は先生<女将さん>から渡された私をモデルにした写真~一年あまりかかって撮り続けた何百枚もの写真が見本ブック写真集になってチップにコピーされたのを選別するのです。

 

 三時のおやつの時間、妻と娘二人四人でケーキを食べておしゃべりです。いっても私は聞くだけ~女三人の賑やかな会話を聞きながら折を狙うのです。

 

  「パパ~タブレット抱えて写真集見せたいの?」

 「お母さん見てくれる?」待ってました!と私は答えます。矢張り妻です。私の気持ちを目ざとく受け止めたのです。

 

 やり取りに娘達も会話がストップです。

 私はタブレット立ち上げ画面いっぱいに私の姿を映し出します。

 

 「女の目から見たらオカマと分かる~」

 長娘がタプレットのぞき込んでのセリフです。

 「それを言うなと言ってるだろう。そのセリフは軽蔑の言い方~自分の父親にそんな言い方するの?」

 

 「ハイハイ~すみませんね。お父さんは美人ですよ」

 「お姉ちゃん、捨て台詞言わない~ホント絶対お父さんと分からないもの」

 「矢張り~そう思う?ママより綺麗~」

 写真を指さす妻です。

 

 「だからお母さん私もどの写真がいいか選ぶのに迷っているんだよ」

 気良くする私。

 「なにも迷うことないよパパさん。私はこれにします。この写真素敵!」

 

 妻が指さしたのはスタジオの近くのお宮さんに初詣したとき撮った、着物姿の私の写真です。

 矢張りね~妻は着物が好きで、結婚してから長い間着物で過ごしていたのです。

 

 妻の言葉が引き金になって、娘達も身乗り出して選考作業に参加。

 「変な家族と思わられるやろね?」

 「鼻が大きいから正面から写したのはだめだよ」

 「でもメイクが凄い、お父さんとは絶対知られないと思う」

 

 再び同じ感想をいうところ聞くと本音は美人と内心認めているのかも~。

 「そうでしょう。私のメイクの先生は女装のメイクでは日本一と言われている先生だからね」

 うんうん~胸そらす私です。

 

 「まさか、名前出すのじゃないでしょうね?」

 さすがに心配になってきたみたいな妻です。

 「大丈夫、ペンネームだからわかりませんから」

 

 「でも写真集を書店に並べるなんて言うけど、ほんとに売れる自信あるの?」

 妻は余程気になるのでしょうね、同じ質問の繰り返しです。

 

 「売れるか売れないかは買う人の気持ち次第だから、分かりません。でもそれは並べてみないとわかる筈ないでしょう?」

 「売れるとお父さん思っているの?」

 「そんなの誰が買うと思うの?絶対買う筈ないでしょう」

 

 娘二人が口をそろえて口々にまくしたてるように言って~

 「一体、いくらで売るつもり?値段は?」

 「年寄だと思われて騙されているのではないでしょうね?」

 

  女三人の口やかましいこと~

 でも私の想いは違うのです。

 

 家族と共に私の女装写真の選考をしたこと~

 これが私にとって最高のウリなのですから~

 売れるなんてことは、そんなことどうでもいいのです。

 

 私のその話、フレンドさんに公開したら笑いながら言うのです。

 「お父さんの女装写真盛り上がってる~考えられない?~うん、普通ありえない~

 でもいいな~ご家族公認なんて~」

 

 そうかもしれませんね。私達家族、私の女装で楽しんでいるのですよ。きっと~

 <おわり>