<2021年空中庭園地下、潮見小路>91歳
60章 昔の私
2017年頃、正月も終わりをつげる1月の話です。
その当時、私と妻はまだ田舎で二人暮らし~私は妻の介護を家でしていたころです。
でも私は女装することは止められません。当時、写真集を作る目的持っていたからです。高速バスに乗って、ホテルに泊まって、キャリー引いての長旅のい大変さも女装するためには代えられませんでした。
それで妻には申し訳なかったけど、月に一度ショートステイに妻を預け、娘二人が交互に来てくれて介護をしてくれるあいだに大阪に出かけていたのです。
言い訳みたいだけど、その息抜きが妻の介護に私は専念する力になっていたのです。娘たちは月一回の母親の介護に来るだけで、父親に任せきりの引け目があったのでしょう。
私の大阪行きは黙認していました。
それは、そんなある日のことです。
下の娘が来たのです。
この次女は綺麗好きで、来ると家の大掃除を始めるのです。綺麗好きの妻の血を引いているのでしょうか?
妻はもう掃除どころか、食事の支度も私がしなければならない状態でした。そのため娘は年寄り夫婦の部屋は汚れているものだと思い込んでいるように、部屋の隅々まで整理、拭き掃除をするのです。
私が掃除したといっても聞く耳持ちません。
それはありがたいのだけど、私の女装の痕跡を見つけられるのが矢張り氣になります。
その日、女装写真専属のタプレットを見つけたのです。私が気がつかないでいたら操作していたのです。
「お父さんこの女のひと誰?私より若い人」
「ええ、そんな写真あった?」
不審に思ってタブレットのぞきこんだら~わ~私の女装写真。
妻に公開するつもりで携帯から入れていた写真です。
女装のカミングアウト妻にしていた手前~こうなったら開き直り?いえ、ついでにです。
「ああ、それ~私ですよ」
「へえ~おかま?」
「あのね、それは男性相手にお金目当てに交情交わす、女装の男性を蔑視した言い方です。
見下げる、軽蔑の表現ですよ。お父さんは単なる女装です」
「そんなことあちこちから女の衣装があるから、分かっています」
妻の衣装と思ってくれたらいいのだけど、サイズが違いますからね。妻の衣装のなかに紛れ込ましているけど、娘からみると一目で見分けるみたい。
そういえばタンスの引き出しに、私の下着がきちんと畳んで入れてあるなかに、ショーツにブラジャー、スリップも綺麗にそろえて同居していた。
私が大阪に行っている間に妻の介護しながら、洗濯するなかに私の女物も洗ってくれていたみたいです。
「でも、それって~趣味なの?」
私の女装は趣味?娘に問われてもすぐに答えが出ません。
早くから妻も、娘達も私の女装知っていたのだと、今になって気が付いて、それに気持ちが捕らわれてしまっているのです。
「写真見て綺麗と喜んでいるの?」
なにか追い打ちかけられ追求されている気分です。
なにも悪いことしているわけでもないのに~
「いいえ、仕事、しごと~モデルです。スタジオで写真撮って写真集作るためだよ」
モデル?嘘言え!でも、こうでも言わないと女装の正当化できないでしょう。
「綺麗と思ったから写真集出すのでしょう?」
「あのね、私がだすと決めたのじゃないよ。メイクの先生が作ろうといったからです」
結局、スタジオ写真のために女装するという論理で言いくるめて、収めたけど~
内心<こう見えても、お前より美人だからね~>ほくそ笑みしていました。
それからです。写真公開するようになったのは~写真集のために撮った写真を、まあ言えば見せびらかすようになって~
フレンドさん達「八千草薫、瀬川瑛子、中島みゆき、深田恭子、島倉千代子」まあ、私の写真がそんな女優さん達に似ていると言われても~でも、なにか私の正体はどれなの?わからなくなってしまいます。
でも、そんな私を作り上げているのは、メイクと写真撮影する森田先生なのですけどね。
本当のところ、私の正体は87歳の女装する、妖怪なのですけど~
おわり