53章 撮影会
<2020年11月もう1年たちました。懐かしい京都観光です>
(ロマン撮影所)
この前の日曜日、大阪梅田にある、<ロマン撮影所>自称だと思いますが、女装スナックが自前の撮影所を持っているところから声がかかったのです。
私もこのお店の常連で、スタップの方や、お客の女装さん達が優しく接してくれるので、お気に入りのお店ということで喜んで撮影に参加したのです。
撮影は52章でも書いていますように初めてではありませんが、今まではお店の宣伝の写真は短時間だったので気楽にしゃべっていたのですが、今回は司会のスタップさん相手にしゃべるというのですから勝手が違います。
お店のウリは?ポイントをどこにおいてしゃべればいいの?
撮影直前になって聞いたものです。
「ロマンのお店の撮影だから宣伝する必要あるでしょう。私自身ロマンに来ると楽しいもの。それ経験談言いましょうか?」
「とくみさんそんなこと気にしなくていいです。とくみさんのしやべりたいことしやべってくれたらいいですから」
司会役のMさんは優しいのです。
「でも私なにしゃべるかわかりませんよ?」
スタジオの生放送で1時間もしゃべっていた私ですからね。
「大丈夫、私が質問しますから、答えてもらったらいいのです」
「それなら安心、なんでもいいから質問してください。答えますから」
大見え切る私ですが、事前に質問の打ち合わせなどしていたら、覚える方に気持ちがいってかえってしやべりずらいのです。
女将さんが撮影するときでも、撮影場所に連れて行くと、説明などありません。
「とくみさんここでしゃべって~」
それだけ。
後は自分で考える?いえ、勝手に言葉が出てくるのです。
カウンターに座ってそんな会話を交わす私達に並んで、ロマンのスタップの案内役のAさんと私の孫が話し合っているのに、ええ、さっき駅迄出迎えてもらって知り合ったばかりなのに、物おじしないのに、わが孫ながら感心します。
そうなのです私はロマンから撮影の話が持ち込まれた時、孫に声掛けたのです。
<撮影見学しないか>て、そしたら即座にOKです。この子は孫の中でも私に似て好奇心強いのを私が見て声掛けたのです。
ああ、孫と言っても27歳結婚しています。
実は私には魂胆があったのです。孫の母親。私の次女ですが、91歳の私の娘ですから50半ばの歳なのです。そのせいか私まで子ども扱い、姑気分で口うるさいのです。
それもコロナの時ですからね。
「大阪行かないでね。うろうろしたらダメよ。コロナに感染して人様に迷惑かけるようなことしないでね。」
まあ、うるさいこと。
電話掛けてきて、私の安否を確かめるつもりだと思うのですけど、お説教になるのです。
それが私の携帯でなく、家の電話にかかってくるのです。
家に私が居るか?それを確かめるのです。
だから私もたまりかねて、「遊びじゃないですよ。仕事~仕事ですよ」
言い返すのです。
でも信用してくれません。女装姿で帰ってくるのを姉に見られている私ですから、姉から聞いて私の言い分など聞く耳持たないのです。
だからその対策^私の作戦は孫を使って信用させようと企てというわけなのです。
撮影会で遊びでない頑張る私を孫に見せて、娘の変な憶測~遊びという表現で言っているものの、女装にたいする偏見をこの際吹き飛ばそうと考えているのです。
でもね~女装さんのひしめく撮影会に孫連れてくるなんて~こんなことするのは私ぐらいでしょうね。いえ、その前にお爺さんが孫に女装姿見せるなんて~それこそ前代未聞。自分でも分かっているのです。破天荒だと~
それより孫娘です。
さかのぼりますが~私がスタジオの2階の化粧室でメイクしてもらって、階下に降りて行くと、台所で迎えに行ったAさんと並んで、孫娘がスツールに座っていたのですが、女装の私見て~
「あれおじいちゃん綺麗やなんか」
笑顔でいうのですが、もうちょと驚いてくれてもいいと思うのですが~
なにか私不満です。
その後です。
お昼食べに行く時間ないので、牛肉弁当をAさんが買ってきてくれたのを、女将さんも一緒にみんなで食べたのですが、孫娘、初めて会ったというのに女将さんとおしゃべりしながら弁当をぱくぱく~
もう、私の方が唖然として~さすがわが孫~と感心したものです。
そうでしょう?
始めて行ったスタジオです。初めて会う人達です。弁当だされても普通は緊張で喉通りませんでしょう。それがおしゃべりしながらです。弁当パクパク~
おかげで孫を気にせず撮影に集中できたというものです。
撮影室は客席のあるカウンターの隣の部屋です。
司会の Aさんに並んで私。カウンターをへだててカメラマンさんがカメラを構えています。
<これで撮影だけでなく録音もできるの?>メカオンチの私には不思議です。
部屋の入口でAさんと孫が立って見物しているのです。
「ではMさん私が指折っていきますから、合図終わったら話してください」
カメラマンさんが指広げます。
「いち~にい~さん~」
「こんにちは~ロマン放送局のMです。きょうはとくみさんに来ていただきました。とくみさんは
91歳の女装さんなのですよ。すごくお元気でそのパワー91歳なんて信じられません。その元気私達ももらいましょう。とくみさんです」
<さあ始まった~ここは孫が見ているのだもの景気よくね~>
「こんにちは~とくみチャンネルのとくみです~ロマン放送局から皆さんに元気お届けします~質問どんどん寄せてください。なんでも答えます~」
と、調子がいいのだけど~後、なにしゃべるかは自動操縦~なんだけど~
「はい~とくみさん91歳と思えない背筋がぴ~んと真っすぐで姿勢がいいですね。なにか秘訣があるのですか?」
すかさずMさんの質問が返ってきます。
「は~い、私の座っている姿みて下さい。椅子の背もたれにもたれてないでしょう。背もたれから離れて座っているのでまっすぐな姿勢になるのです。電車に乗っても後ろにもたれないで座っていますよ。」
「なるほどね~健康つくりになにかしられるのですか?」
「筋トレ週3回通っています」
「ええ、筋トレするのですか?」
「はい、でも90歳では一般の筋トレ施設は入れてくれませんから、介護施設の筋トレです。でもローイング。トーソフレクション。レッグプレス。バイオステップそしてデジタルミラーでは5分で500歩あまり足踏みします」
「すごいですね。91歳でもできるのですね」
「年寄になったからと言って隠居しないで、鍛えれば高齢でも体鍛えられるのですよ」
「駅のホームの階段も手すりなしで上がれるようになりました」
もう質問なしの独演会のおしゃべりで<時間だ>と言われるまで続いて~。
後で孫娘に言われましたよ。
「おしいちゃん良くしゃべるね~」てね。
私て考えるよりさきに、口<言葉>がさきに出るのです。
ところが撮影会はこれで終わりではなかったのです。
カウンターに移って、今度は女装さん二人にはさまれて質問されるのです。
離れた場所から他の女装さん達が見学です。
両隣りの女装さん、さすがに緊張しています。顔がこわばって言葉がすらすらでないのです。
<こんなこと書いて~ごめんなさい~>
「じや、いいですか、指数え終わったらとくみさんに質問してください」
カメラマンさんに言われて始まったけど、つかの間沈黙です。
「あの~とくみさん綺麗けど顔とか肌の手入れどんなことしていますの?」
「私綺麗?ありがとうございます。いいえ、女将さんの日本一のメイクのおかげですよ。」
そうなのです。
「私の専属美容師?写真家?私の先生のメイクのすごさに東京や地方からもメイクや着付け写真撮影に来られる女装さんがいるのですから。
「顔の手入れは朝、晩洗顔して、女将さんに勧められたクリーム塗って~これ、朝に顔洗うとつるつるなのですよ。それに90歳越えたでしょう~皮膚が乾きますものね。だから保湿クリーム朝晩塗って~いえ、まだあった~女将さんに教えられて<豆乳>欠かさず飲んで~肌にうるおい持たすのに^ああ、これも女将さんに教えられて<コラーゲン>の飲料水飲んでいるの。だから90でも私、目じりに皺がないのですよ」
「ええ、ホント~?」一斉に両側の女装さんだけでなく、見学の女装さん達からも声があがります。それから録音しているのに笑い声が上がって楽しい雰囲気に包まれて~。
まあ、こんな調子でえんえんと続く私の独演会。
また孫娘に言われました。
「おじいちゃん自分が楽しんでいるみたい」て~
「そうですよ。私が楽しんでしゃべらないと、動画見てくれる人も楽しくないでしょう」
「ホントだ。皆さん優しくて、おじいちゃん大事にしてくれて~思っていたことと違った。私の友達のほうがおかしな友達がいる」
そういう孫娘に二人で大笑いしたのです。
孫娘、私が遊びでなく頑張っていること母親に報告するでしよう。
安心感に私は満たされたのです。
<オワリ>