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【 テーマ「かこ」について 】

「かこ」では、私が2008年9月に経験した交通事故について綴っています。

 私自身がこの貴重な経験を忘れてしまいたくないから。
 毎日毎日起こり続ける交通事故、そのひとつひとつ痛み・重みを
 少しでも多くの人に知ってもらいたいから。
 そしてこの経験を踏まえたうえで、
 毎日を楽しんでいる人がいるんだということを知ってもらいたいから。

主観とエゴのかたまりかもしれませんが、お付き合いいただけたら幸いです。

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大型の福祉タクシーに乗り込み、走り出してほどなく、運転手さんがこちらに声をかけた。

「運転中、こんな感じですが大丈夫そうですか?」

私は「大丈夫です」と即答する。

大丈夫かと聞かれたら大丈夫だと即答する私の性格。
だけどこのときの「大丈夫」には少しだけ嘘も交じっていた。


車がちょっと揺れるたびに、傷が痛む。


お医者さんがなぜ転院まで1ヶ月半待つよう言ったのかがようやくわかった。
1週間前の私にはこの振動は耐えられなかっただろう。



車いすのリクライニングを倒すと、少しは楽になった。
このまま、ちゃんと目的地まで着いてくれますように…。





運転手さんと母と3人きりの車内では、ほとんど会話がなかった。

痛かったのもあるし、面倒くさかったのもある。

私は少しでも眠れるよう目を閉じた。





しばらくすると、見覚えのある風景が窓から見えた。

もっとよく見ようと、私はリクライニングを起こす。



ああ…

帰ってきた…



自然と顔がゆるむ。

丘の上に見える大きな建物を指し、
「あれが大学だよ」
と母に教えると、母も一緒に窓を覗き込んだ。


その街並みは、たった1ヵ月半離れていただけなのに、すごく懐かしく感じた。

アルバイト先の書店、よく2人で行ったデパート、ヤスの好きなパチンコ屋。

全部全部が愛おしい。





私、帰ってきたよ。