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【 テーマ「かこ」について 】


「かこ」では、私が2008年9月に経験した交通事故について綴っています。


 私自身がこの貴重な経験を忘れてしまいたくないから。


 毎日毎日起こり続ける交通事故、そのひとつひとつ痛み・重みを

 少しでも多くの人に知ってもらいたいから。


 そしてこの経験を踏まえたうえで、

 毎日を楽しんでいる人がいるんだということを知ってもらいたいから。


主観とエゴのかたまりかもしれませんが、

お付き合いいただけたら幸いです。


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9月29日。


いつものとおり、理学療法士(リハビリの先生)が病室にやってきた。

車イスを押して。


「さぁ、今日はこれに乗ってみようか!」


リハビリは事故後1週間ほどからすでに始まっていたのだけれど、

私ができることと言えば右足に電気をかけたり、

「動かしてごらん」と言われ

ほとんど動かない右足に意識を集中させて踏ん張るくらいなものだった。



2週間寝たきりだったのに、いきなり車イスなんて乗れるのか、という不安はあったけれど、


  乗りたい


その気持ちのほうが勝っていた。




手足は2週間のあいだにすっかりやせ細り、

あんなにダイエットしようと思っていたのが嘘のように骨と皮状態になっていた。


車イスに乗るのはほぼ先生の力で、私はなんとか先生の首につかまっているだけ。

2週間ぶりに「座った」。


「じゃあー行ってみようか!」


先生が車イスを押してくれる。

初めて見る自分の病室の扉。

ナースセンターに、自動販売機に、ほかの患者さんたち。



体中がギシギシいうけれど、そんなことよりも喜びでいっぱいだった。

通りがかった看護師さんが「あらー車イスに乗せてもらったの!いいねぇ」と声をかけてくれる。




エレベーターを使い、リハビリ室まで連れてきてもらった。

はじめてのリハビリ室。


「これからここでリハビリするようになるんだよ」と言い、

先生はリハビリ室をぐるーっと回ってくれた。


ベッドがいっぱいあって、平行棒やら、積み木やら、スロープ、階段…いろんなものがある。

17時を過ぎたリハビリ室にはすでに患者さんはいなくて、うす暗かった。



ガラス張りの扉を見つけて、

「外に出たい」と言ってみた。


先生は快く承諾してくれて、外に出てみる。



2週間ぶりの、外。


まだ夏だと思っていたのに、秋のにおいがする。





 そうか。


 夏は終わったんだ。




なんだか泣きたいような気持になった。



自分の知らぬ間に、大学最後の夏が終わっていた。







初めての車イス体験は、2週間ぶりの外の空気は、

すごく気持ちのいいものだった。


時間にすればたった10分、15分程度。

だけれど私のからだはぐったりと疲れて、

夕食までのあいだ、少しの眠りについた。




秋のにおいが、頭から離れない。


いい夢が見れそうな気がした。