2度目の手術は、

骨盤を切り取って骨折した腰椎の代わりにはめる

…という大手術だった。


本当は事故直後にやってしまうほうがよかったのだけれど、

出血多量で死んでしまう可能性があった。

なのでまずは金属による腰椎の固定をして、

2度目の手術で折れた腰椎の取り出し、骨盤からの移植を行うということだ。


あとから聞いたことなのだけれど、

私は最初の手術で出血多量なだけでなく、合併症も起こしていた。

大腸の破裂と右目上の挫傷を同時に手術し、合併症の対処をしながら腰椎骨折の手術

…というなんとも大変な手術だったそうだ。


そんなことも知らず、手術前日に医師から手術前の説明を受けたときに、

「合併症が起こる可能性もありますが」と説明されて不安になっていた。




2度目の手術日の朝、私は不安と緊張と痛みと戦っていた。

戦う、と言ってもただ黙々と精神統一していただけなのだけれど。


 「おはようございまーす」


いつものように看護師さんが私の傷の状態を確認しに、朝の巡回に来た。

その看護師さんは私とほとんど変わらない年齢で、

私はいつも優しく笑顔なその人が大好きだ。


「傷見せてねー」と言い、おなかの傷のガーゼをはがす。

看護師さんの言葉が止まり、私も自分のおなかに目をやった。


何、これ。


黄色い液体とグロテスクな色が絡まりあって、ガーゼのほぼ全体を占めていた。

おなかの傷も同様のグロテスクな色の液体があふれ出ている。


 「大丈夫だよ…。うん、大丈夫、お医者さん呼んでくるね」


看護師さんはそう言い、部屋を出て行った。

だけど、看護師さんも動揺は隠し切れていなかった。

私はただ、これで今日の手術ができなくなっちゃったらどうしよう、ということだけが心配だった。





外科の担当医がすぐに来てくれた。


 「あぁこれはね、縫い合わせていたところが1つはずれちゃったんだね。大丈夫だよ」


今日の手術も問題なく行えると言われ、私はほっと一安心する。

それにしても、よくまぁ自分で気付かなかったものだ。

「痛かったでしょう」と看護師さんに言われたけれど、

私はいつもの麻酔が切れてきたのかなぁくらいにしか感じていなかった。


痛みどころじゃないくらい、不安と緊張が勝っていたのか、と今更ながらに気付く。

情けないなぁ。





数時間後、そろそろ準備しようか、と看護師さんがやってきた。

大きな針の点滴を刺し、手術室へ向かう。


心の中で、何度も何度も、ヤスに話しかけた。




大丈夫。


ヤス、行ってくるよ。