次に目が覚めたときは、上の姉がいた。



「ふゆ!大丈夫?いや…大丈夫なわけないよね。でも良かった。」
姉はそう言って私の手を握った。

私はなんだか安心して、微笑んだ。

不思議と痛みはなかった。

麻酔がきいているのだろう。

聞きたいことがあるのだけれど声が出せない。

呼吸器が、口を塞いでいる。


姉の手のひらに文字を書いた。

『や、す、は』

わかるかな、と不安だったけれど、意外にも姉はすぐに理解してくれた。

「ヤスくん?ヤスくんね、大丈夫だよ。同じ病院にいるよ。一緒にICUに入っているよ。」

良かった…。

安堵で目を閉じる。


そして、私はなぜ事故に遭ったんだっけ?とゆっくりと記憶を探った。
ヤスが運転して、私はいつものように助手席に乗っていて………ああ、そうだ。サークルの合宿の帰りだった。

そうだ。もう一人、乗っていたんだ。

私はもう一度姉の手のひらに、後部座席に乗っていた女の子の名前を書いた。

姉はまたすぐに理解してくれた。

「あ、後ろに乗ってた女の子ね。その子は違う病院に運ばれたよ。」

良かった。

ちゃんと生きていてくれた。
私は安堵して、また、眠った。



それから何度も目を覚ました。

私はICUにいるのだそうで、横たわる視線からは天井とカーテンしか映らない。


遠くから、聞き慣れた声が聞こえる。

聞きなれた彼の、聞きなれない呻き声。

姉が言うには、彼はまだ手術ができなくて、麻酔だけ打っている状態だそうだ。

頑張れ、頑張れって、心のなかで、何度も呟いた。


父も病院に駆けつけていたようで、顔を見にベッドの近くまで来た。

なんと声をかけられたのかは覚えていない。