文:サムイル・マルシャーク
絵:ミハイル・ツェハノフスキー
2004年、東京都庭園美術館で開催された「幻のロシア絵本1920~30年代」を見に行ったときに、復刻版の絵本を2冊買いました。
その一つがこのПOЧTA(郵便)。
世界中を旅する紳士を追って一通の手紙が転送につぐ転送を重ね、地球を一周するお話です。
この写真ではよくわかりませんが、無駄を省いたきれいな絵です。
一通の手紙とあて先に書かれている町並、そしてその手紙を運ぶ郵便屋さんが各町ごとに描かれています。
ようやっとあて先の主に手紙がたどりつくのですが、そのときの封筒には、たくさんの修正と切手と消印が押されていて転送された経緯を物語っています。
ロシアの絵本について少し解説。
1917年のロシア革命以後、子供の絵本にも新しい風が吹きます。
1920年代の絵本は安っぽい紙にホッチキスでと留めただけの素朴なものですが、ロシア・アヴァンギャルド芸術の影響を受けた自由奔放なイラストレーションが描かれます。
このときの絵本は西欧諸国でも高い評価を受けます。
1920~30年代の作家は社会主義国家の掲げる理念を信じ、働く人々に脚光を当てた絵本を作り出していきます。
しかし1932年、ソ連共産党の中央委員会で「文学・芸術団体の改組についての決議」が採択されたことをきっかけに、ソ連国内の芸術団体は解散させられ、国家の厳しい監視下にさらされることになります。
絵本もこれをきっかけに衰退していきます。
大胆な構図、簡略化された絵はなりをひそめ、代わって写実的な絵が描かれるようになります。
また第2次世界大戦をきっかけに紙・インクが不足し、絵本は小さくなり、出版もままならなくなっていきます。
大戦後、再び絵本は出版されるようになりますが、かつての絵本の勢いはもうありませんでした。
参考:幻のロシア絵本 1920~30年代 図録 芦屋市立美術博物館+東京都庭園美術館