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この国のタブー

素人がタブーに挑戦します。
素人だけに、それみんな知ってるよ?ってこともあるかもしれませんが。
コメント、質問、大歓迎です。お手やわらかにお願いします。

自然と科学の、少し不思議な話です。


数か月前に、米国の『TOUCH』というTVドラマのDVDにハマりました。以下、自己流で恐縮ですが、少しご紹介します。

主人公のマーティン・ボームは、9.11同時多発テロ事件で妻を失って以来、空港の荷物係をしながら、11歳の息子ジェイクと2人暮らし。しかしジェイクは無言症を患っており、生来一度もしゃべったことがなく、いつもノートに数字を書いて一人遊びをするばかりで、全くコミュニケーションが取れない。マーティンは途方に暮れる毎日を過ごしていた。

ある日のこと、ジェイクは近所の携帯アンテナ塔に登って騒ぎを引き起こす。児童保護局はこれを問題視し、ジェイクを父から引き離し施設へ引き取ろうとする。
一方、息子を手放したくないマーティンは必至の抵抗をするが、その過程で彼は、ジェイクの不思議な行動に気付く。それはノートに書かれた、「1、1、2、3、5、8、13、21、34、55、89、144・・・」という数字の羅列だった。
ここからマーティンは、ジェイクの示す様々な数字によって導かれ、まさに奇跡としか言いようのない運命を辿ることになる。人生、運命、そして家族愛とは何か。感動のスピリチュアル・サスペンス。

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実は私、主演のキーファー・サザーランドは、ドラマ『24 -TWENTY FOUR-』以来の大ファンでして、『24』の出演俳優と一緒に飲んだこともあるくらいです(本当は単なる偶然ですけどw)。しかも『TOUCH』は、『24』の製作スタッフが手掛ける作品なので、第1話を見ただけで、予想以上にハマってしまいました。お勧めです。

と、個人的な愛着はここまで。



【世界を支配するフィボナッチ数】

さて、物語でジェイクが示した先の数列ですが、これにはちゃんと意味がありました。それは「フィボナッチの数列」と呼ばれる自然法則のひとつで、イタリア数学者レオナルド・フィボナッチが12世紀に解き明かしたものだそうです。
彼は、「1対の子ウサギが1カ月で親ウサギになり、その1カ月後に1対の子ウサギを産み、どのウサギも死なないと仮定した場合、1年間でウサギは何対になるか」という問題を考え、次のような数式を導きました。



数式にすると少し難しい印象を受けますが、ヒマワリの種の配列、ハチやアリの家系、パイナップルや松ぼっくりのウロコ模様、オウム貝の貝殻の形など、自然界に存在する様々なシーンでこの数列を見つけることができます。
 参考:Wikipedia記事「フィボナッチ数」



つまり、ジェイクは単なる無言症ではなく、11歳にして独学でこの数式を解いたのです。

自然界には様々な法則があります。それは時に、一見すると程遠い関係のパイナップルの模様とオウム貝の貝殻にも、摩訶不思議な共通性を示すこともあるようです。



【世界は多様化する】

ところで話は飛びますが、最近、「多様性」という言葉をしばしば耳にしますね。世界はよりグローバル化し、メディアは拡大複雑化し、それに伴って人々の価値観も多種多様になりました。いや、むしろ元々潜在的には存在していた価値が、ネットや外国語の浸透によって表出したに過ぎないのかも知れません。

でもこれって、改めて考えてみると少し不思議な気もします。
私達が、社会や文化(あるいは文明と呼ぶべきかも知れませんが)の進化を考える時、やがてこれらはひとつに収斂されていくような期待を抱きますよね。なぜなら、私達は日々、多くの議論を重ねてはコンセンサスを築き、互いに仲良く平和に暮らすための努力を重ねている筈だからです。
でも実際は、逆行しているような気もしますよね。

「多様性」という言葉をWikiで調べると、生態学上は「多様性を維持するためには、多様性そのものが必要」であり、また「環境に適応する面からも、画一的な生物群よりも多様性を持った生物群の方が生き残りやすい」とあります。
加えて、社会学上の観点からもこれは一緒で、「各々の民族が確固たるアイデンティティを維持しながら相互に尊重する事で、最大の変化を促す」、「更に言及するならば、個人としての多様性が集団の経験値を総合的に高める」と書かれていました。
 参考:Wikipedia記事「多様性」

確かに、あらゆる生物は自らを多様化することで、進化と発展を遂げてきました。そして恐らく、世界で最も進歩的な社会を構築する米国ですが、そこはまさしく世界で最も多種多様な人間と価値の集合です。それを、「melting pot(人種のるつぼ)」、あるいは「サラダボウル」と例えたりもするくらいです。


 参考:Wikipedia記事「人種のるつぼ」



【エントロピーは増大する】

こうした自然現象を説明するひとつの考え方に、「エントロピー増大の法則」という話があります。これは本来、熱力学の基本法則のひとつなのですが、情報分野や生物分野は、ひいては社会学にしばしば応用されて用いられることがあります。
 参考:ワシモ(WaShimo)のホームページ「エントロピー増大の法則」(2004.08.04)

「エントロピー(entropy)」の意味をひと言で説明するのはとても難しいのですが、少し乱暴な言い方をすれば、「でたらめさの尺度(=物理学者ボルツマンによる証明に基づく)」のことです。

 ・秩序があって規則的で整然とした状態→エントロピーが低い
 ・無秩序で散在した、ごちゃ混ぜの状態→エントロピーが高い

例えば、ビーカーの水に青いインクをポタッと一滴落とすと、最初は別々の水とインクの色が、徐々にマーブル模様を経て、最終的に完全に混ざり合った状態へと至ります。インクを落とす前の水は“エントロピーが低い状態”でしたが、インクが落とされたことによって“エントロピーは徐々に増大”し、完全に混ざり合った時点で“エントロピーは最大”になります。
これが、「エントロピー増大の法則」です。
 参考:Wikipedia記事「エントロピー」

熱力学の基本法則ですから、あらゆる大自然はこの法則によって支配されています。たったひとつの点から爆発し膨張を続ける宇宙そのものも、エントロピーを増大し続けている訳です。
ただ、とても面白いのは、この法則が社会現象に対しても、当てはめて考えることができるという点です。例えば、環境汚染も価値観の多様化も、全てエントロピーが必ず増大する方向に作用するために生じるんだそうです。あるいは、どんなに片づけても片づけても、ふと気づけば部屋は散らかっているのも、エントロピーが増大するから・・・ってこれはさすがに言い訳臭いですけどねw
 参考:内田麻理香:カソウケン(家庭科学総合研究所)「エントロピー増大の法則」



【宇宙はやがて鉄になる】

それでは、宇宙が際限なく膨張した末に待っている世界とは何でしょうか?
宇宙物理学の世界では様々な学説が唱えられていて一致見解には程遠いようですが、以前にもご紹介した辺境生物学者の長沼毅は、面白いことを言っていました。

宇宙のエントロピーが最大化した時、「全ては鉄になる」のだそうで。
 参考:Youtube動画「長沼毅 宇宙は鉄をつくる為に存在している? 」

宇宙には様々な物質があります。最初に作られたのは質量の軽い水素やヘリウムで、これらは互いの重力によって徐々に引き合い、集まって大きくなると天体が出来上がります。やがて天体が巨大化すると、星の内部は巨大な圧力によって高温高圧となり、太陽のような恒星となります。
恒星の中心部では、水素やヘリウムが核融合して、質量のより大きい物質が生み出されていきます。鉄や、それよりも重いウランなどです。しかし、恒星のいくつかは最後に超新星爆発するので、ウランなどの物質は今度は核分裂して質量を減らしていきます。こうしたサイクルを延々と繰り返せば、全ての物質は最も原子構造の安定した鉄へと至ります。

つまり、宇宙に存在する全ての物質が、鉄へ向かっているということです。もちろん、人類はそれよりもずっと前の段階で滅ぶでしょうけれど。


あ、そう言えば、2001年にインド洋で発見された巻貝の足は、鉄でできてたらしいです。人類も進化の過程で鉄を取り込めるようになれば、もう少し長生きできるかもしれませんけどね。


 参考:カラパイア「てつのよろいを身に着けた世界唯一の生物「スケーリーフット(ウロコフネタマガイ)」」(2009年12月22日)


世界は今日も、不思議に満ち溢れています。
人々の興味もまた、決して尽きることはありません。
巻貝だけが知っている世界の真実が、どこかに有るのかも知れません。

今回も最後までお付き合い下さりありがとうございました。