日本対コロンビアの分析(日本の2失点目) | 日本で活動中のサッカー監督のブログ

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バルセロナで修行してきましたが、2017年より日本で活動しております。

前回に引き続いて日本対コロンビアの
分析をします。

前半早々に失点した後も日本は方針
を変えることなく、リスクの高い攻撃を
続けましたが、得点には至らず、
かといって失点も何とか回避したという
展開でした。

しかし前半終了間際に日本がいい形で
ボールを奪い、相手ゴール前で数的
同数のところを本田が鋭いクロスを
ニアサイドに蹴り、岡崎がうまく押し
込みました。
ファーサイドのクロスで空中戦をして
いたら確実に負けていたので、
これしかないという見事なパス
見事な得点だったと思います。

しかし後半からはハメス・ロドリゲスが
投入されてコロンビアの攻撃に流動性
が生まれます。

後半動画

日本の2失点目は本田が長谷部から
パスを受け、フリーの内田にパスする
と見せかけて内側にドリブルを仕掛け
失敗したところから始まります。
(上記動画の試合時間53:55より)
単純に内田に預けるべきという意見も
ありますが、どこかで仕掛けが必要
で失敗に終わったものの、本田の
仕掛け自体を否定する気にはなりま
せん。

問題はボールを失った後の日本の
守備です。ボールを奪われた後に
簡単に相手FWへパスが通って
しまっています。(54:03)

味方ボールであってもカウンターを
警戒して相手FWに対しては今野か
吉田のどちらかマークをついて残りが
スペースのカバーをするのが、
サッカーの基本中の基本の守備戦術
です。しかし二人はどちらも何をする
でもなくゾーンを守り、簡単に相手
FWにボールを持たせています。
これは集中力の欠如というしかありません。

相手FWは一人でカウンターは無理
と判断し、味方の上がりを待つ
ドリブルをしました。日本の両CBは
カウンターがないとみると背後のス
ペースをケアし長谷部が彼にプレスを
かけられる状態になりました。
(54:04)
ここで長谷部は数的優位にも
かかわらずボール奪取をチャレンジ
せず、両手を上げてむしろファール
回避をアピールして相手を自由にさ
せています。この位置でのファール
は直接ゴールの危険もないですし
ファール覚悟で相手にチャレンジ
すべきでした。

結局、相手FWにボールを簡単に
繋がせ、簡単に前を向かせるという
危険な行為を日本は3人も選手が
いながらやらせてしまっていました。

さらに守備の崩壊は続きます。
相手FWは一旦ボールを後ろの選手
に預け、右サイドのスペースに走り
ます。このときに長友はボールを
持っている選手にプレスにいって
いますし、今野は新たに上がって
きた選手に対応しなければならな
いので、このFWにパスを通らない
ようについていくのは長谷部の
仕事でした。しかし、ここでも
マークをせず、漫然とスペースに
居残り簡単にFWへのパスを許し
ます。(54:11)

このゲームに限らず、長谷部の
守備の問題点は漫然とスペース
にいれば守備になると勘違いして
いて、連動したプレス戦術を
遂行できないことです。

長友が後退しながらFWにプレスを
かけ直しましたが今度は今野が緩慢な
マークをして、せっかく相手が
ボールを受けた時にゴールを背
にしていたはずなのに寄せきれず
簡単に前を向かせます。
(54:16)

この味方の守備の不甲斐なさに
香川が不安になったのか今野の
ポジションにいってしまいます。
本来であれば香川は対応を
今野に任せて相手右SBへのパス
コースを潰すことにのみ集中
すべきでした。実際には香川の
プレスをかいくぐり相手右SBに
ドフリーでボールが渡って
しまいます。(54:23)

さらにここで問題なのは香川
が今野と二人でボールを取ろう
として取れず、相手右SBに
フリーでボールが渡った時に
100%のスプリントで相手
右SBにプレスをいかなかった
ことです。この場面で長谷部が
数的不利の状況にあり、緊急
事態で対応すべき状態だった
にもかかわらずです。
(54:26)
試合の54:27から状況の悪さに
気づいてスプリントしましたが
時既に遅しでした。

この局面で相手の守備にヒビが
入ったことをエースのハメス・
ロドリゲスは見逃さず絶妙の
タイミングでエントレリネアスに入り、
パスを受けます。(54:28)

ハメス・ロドリゲス対吉田という状態
でしたが、これに内田が不安を思っ
たか、マークを捨ててボールに
食いついてしまいます。(54:30)

内田の守備ミスをハメスは見逃さず
外したマークにパスを送り、ボール
を受けたコロンビアの選手がゴール
を決めました。

3,4失点目の分析は次回以降に
送るとしてこの失点で共通する問題
はマーキングの意識の低さとボール
奪取すべきところでチャレンジできて
いないところ。特に長谷部と今野に
ついてはこのシーンだけで2回ずつ
ボール奪取の機会を何もせず、
失うような戦術的なミスをしていて、
こんなにミスを重ねたら失点するのは
当然という印象です。

大久保を1トップにした代償が守備
の弱い香川による戦術ミスであり
香川と長谷部を最後まで信じ続け
たザックの甘さともいわざるをえ
ません。この失点の後も僕として
は長谷部と山口の交替かと思いま
したが、ザックは青山と交替させ
ていて長谷部に対する過剰評価を
このときも感じました。

さらに根本的な問題は守備戦術の
完成度が低いために、選手は自分の
役割を逸脱してしまいさらにその逸脱
した失敗を埋めるためにさらなる失敗
を繰り返すという悪循環です。
吉田とハメスの1対1に対して内田が
吉田に信頼を持てていればボールに
あそこまで食いつくことはなかっただ
ろうし、戦術がもっと体に染み付いて
いれば、味方への不安だけで
戦術がブレることもなかったのかなと。

この失点は今回の日本代表の問題点
を大いに明らかにしたと思います。