INAC神戸の練習を見て(後編) | 日本で活動中のサッカー監督のブログ

日本で活動中のサッカー監督のブログ

バルセロナで修行してきましたが、2017年より日本で活動しております。

前回、INACの練習をみて
気になった選手を書きましたが
今度は練習全体について

日本の文化的な背景も
あるのですが個々人の自己主張が
足りないなと思いました。
例えば前回挙げた例ですが
ボランチの田中陽子選手が
角度を付けて下がりながら
バックパスをすることで
FWへのパスコースが空き
CBが受けたバックパスを直接
味方FWに当てるイメージで彼女は
即座に次のスペースに走りこんで
いました。しかし肝心の味方FWが
相手DFのマークを外して
開けたスペースに入ってこないので
CBも味方FWにパスを当てられず
田中陽子選手のプレーイメージは
そこで壊れました。田中選手は少し
がっかりとした表情をしながら
何もいわずプレーを続けていました。
もちろん入団したばかりで
レギュラーにもなれない自分が
先輩たちにいろいろ注文をつけるのは
日本の組織ではいろいろ
問題があるだろうなと。

でもスペインであれば意見が通るか
通らないかは別にして、
意見する選手の方が多いですね。
日本であれば意見が正しい正しくない
に限らず上の人間にものをいうこと
自体が生意気と受け取られ、
自分自身の評価を落とすことがよくあります。
でもスペインでは意見をすること
自体については日本より
許容されています。

スペインではお互いに対立した
意見をぶつけあい、結果が平行線
だったとしても、お互いの心の内を
ぶつけあったということで、
信頼感が生まれていきます。
日本はどちらかというとなるべく
対立した意見をぶつけず
お互いに同意できる部分を
なるべく多くつくる、あるいはそういう空気を
つくることで信頼関係がつくられます。
ここがスペインと日本の信頼関係を
築く部分で大きな違いと感じています。

ときにスペイン人は理不尽な
主張や一方的な罵詈雑言を
いうこともあります。
そういうものに対して
跳ね返すことをせず
ただ精神的に凹んだり
その場では何もいわず
裏で文句をいうような
ことをしても、全くチームで
信頼関係は生まれません。
それがスペインリーグで日本人が
活躍できない一番の理由
だと僕は思っています。

話が少々脱線しました。
間違って受け取ってほしくないのは
それは良い悪いではなく
文化的な違いだということです。
元日本代表監督のトルシエが
最初の日本代表合宿で
選手らに烈火のごとく怒り飛ばしたことで
エキセントリックな監督という
レッテルを貼られましたが
今なら当時の彼の考えがわかります。
自己主張の少ない選手らを
挑発することで、個々の選手が
どんな性格を持っているのか
測りたかったんだろうなと。
むしろトルシエの方が
日本の選手らに対して
エキセントリックな印象を受けた
のかもしれません。

またまた話が脱線しました
練習の組立てについては
うまくゲーム要素を入れていて
なかなかうまいと思いました。
ただ最後のゲームで
レギュラーチームと控えチームにわかれて
試合をしていて二点、気になりました。
一点目
まず控え組とレギュラー組に差がありすぎて、
練習試合として成立していませんでした。
否、星川監督の真意が見えないので
なんともいえませんが。ただ事実として
ひたすらレギュラー組が控え組を食べる
ワンサイドゲームになっていました。
全体のビルドアップの調整をしたいので
あれば、ボールが出たら必ず
レギュラー組のゴールキックで
再開すればよいかなと。
あるいは本番を想定した強度を
実現するのであれば控え組
レギュラー組と分けず
攻撃陣はレギュラー守備陣は控え
守備陣はレギュラー攻撃陣は控え
というチーム分けにすれば
バランスのとれた試合になるなと。

最後に気になったのは攻撃面での
判断の悪さですね。
例えば控え組には人数不足のため
サッカー経験も怪しいフィジコが入っていましたが
GKが何度もフィジコにパスを出して
ボールをかっさわられて失点するという
場面を何度も見ました。

レギュラー組のプレスの方向と
タイミングの確認にわざとやっているので
あれば仕方ないのですが、
みんな簡単にそのフィジコに
ボールを出していることに驚きました。
本当に自分が評価を受けたいのであれば
味方チームの攻撃を止めるような
人間にパスは出しません。
これはこちらのストリートサッカー
レベルでもある大原則です。
それを易易とボールを渡して
しまう選手たちに違和感を感じました。
単純にそういう判断力が足りないのか
あるいは監督からそういう指示が
出ているのか。仮に監督から指示が
出ていたとしても
スペインのプロであれば
受け入れられないのが普通です。
「お前はかませ犬としてプレーしろ」
といわれているようなものなので。

まぁ何もチーム事情を知らずに
ただ外野からみた意見であり
いろいろ見落としていて
突っ込まれることも
かもしれませんがとりあえず。