それまで私は、泣いてませんでした。


弟は、その都度泣きました。

甥は、お通夜の日の朝、真っ赤な目で

起きてきました。

姪は、泣き顔を見せませんでした。


そんな葬儀の日

朝、葬儀会場の控え室に行くと

弟がひとり、まりちゃんの枕元に座っていました。


となりに座って、

おはようまりちゃん!と挨拶をして

弟と話をしていたら

弟が『感謝しとったよ。』


誰に?


『お姉さんには本当に、いろいろ

助けてもらったね!って(深夜の緊急入院とか)

感謝しとるっておかあちゃんが言うてたよ。』


私に?

その弟の言葉を聞いて、

突然込み上げる嗚咽…

たまらなくどうしようもできない嗚咽

(あとから次女が言うには、出棺の時より

激しく泣いてた…らしい)


弟も、まりちゃんも

雑用要員の私には、過去何もなかったから

まりちゃんから感謝されていたことが、

張り詰めたガードを壊したのかもしれない。


となりの弟も、また涙した。


立飯(たちはん)の用意ができました!と、

スタッフの女性が声をかけてくれたので、

みんなで助六を食べました。


亡くなった人との最後の食事。

旅立ちの膳…。告別式の前に、親族が集い

頂く儀式です。


簡単に食べることができるようにと、

助六(おいなりさんと巻き寿司)。

食べたあとは、最後のお別れ。


担当の方が来て、

「告別式が始まるともう、

棺を開けることはできなくなりますので、

お別れの時間をお過ごしください。」

と言ってくれました。


告別式1時間前、蓋が閉められ

式場に移動。

そこでも、蓋を再びずらしてくれてました。

開けたり閉めたりと、式場の方の気遣いは

弟を想ってのこと。


寄り添うことに徹してくれました。

ありがたいことです。


告別式に早く来てくれた人たちに

顔をみてやってくれ!と弟が案内してました。

涙する人もいて、

いよいよお別れが近いんだなって

遺影モニターの鮮やかなまりちゃんが

微笑みました。


棺の蓋が閉じられて、告別式が始まりました。

スタッフさんが、位牌と卒塔婆を

祭壇に供えました。


戒名がわかります!

名前の一文字は?無いのかな?

(あとでお坊様がおっしゃったことには

一文字使える字が無かったとか)


恵 香 という字が使われていて

「女性らしい綺麗な戒名だね」と

聞こえてきました。

花の季節に、桜の風景に想いを馳せるような

素敵な戒名に空気が少し、軽くなった感じがしました。


お坊様が、お通夜と同じようにお清め

儀式からスタート。

聖水?を杖につけてバンバンバン、ランランラン?

と唱えながら、梵字?を棺の上の空中に

書いていきました。



読経が始まり、お焼香。

喪主からまた、同じように全員で。

お通夜よりも、読経が長かったのだけど

参列は、お通夜のほうが多かったので

告別式も、1時間ほどで終わりました。


そのあとは、お別れの儀。

棺の蓋が開けられて、スタッフさんたちが

花を切り取り、トレーの花を入れていく儀式。


この儀式は…辛いのです。

過去、どの告別式でもこれはなんとも言えない

哀しみが沸き出すところ。


最初は、身内から。

顔のそばからカサブランカや百合、

グラジオラスなど、華やかな花を。


参列の方々も、花を手に取り入れていきます。


私は、お顔の横にピンクの百合の花を

入れました。入れ終わりうしろに下がったとたん

もうこのまりちゃんの肉体とは、

永遠の別れなのだと思ったからか

押さえきれない感情が、嗚咽からの号泣と

なってしまいました。

止めどなく流れ出す涙と、喉からでる泣き声と。


ここで、感情爆発です。

(次女は、ここより朝の方が泣いてたと言ったけど)


棺を霊柩車に運ぶ男性は、

小さな三角の布を額に付けてから、

花を入れていく儀式スタートだったのですが、

姪の夫は、涙なしではだったのか

その三角巾、鼻の上までずらしてて…

泣き顔隠し。そこもまた、泣けました。


最期のお別れ。

それまで黙っていた親族からも、

泣きながらのお別れの掛け声が。


まりちゃんのお母さんは、

何度も何度も名前を呼んで…

こんなに早く行くなんて!と。


いつも寡黙な私の父は、

ありがとうまりちゃん!と声を震わせて言いました。


涙が止まりませんでした。


担当の方が、「杖と傘を入れて欲しい。

傘は胸元に乗せ、杖は右手(聞き手)に

握らせてあげてください。」と。


私が、杖を横にさし、右手を持ち上げて

杖を握るように整えました。


最後の花は、胡蝶蘭一対。

これは、弟と姪が、一番上に

頭の両脇に入れました。


弟が、最後の最後のお別れ。

号泣しながら、

『待っといてーよ!絶対に待っといてな!

あっちでまた一緒になって、

生まれ変わったらまた夫婦になろうな!

おかあちゃん、ありがとな!わしのことは

心配せんでええから。ありがとな!』


すごい泣き声が聞こえてきたと思ったら

壁に顔をこすりつけて号泣している次女でした。

大きな声で、ワンワン泣いて…。

みんなが驚くくらいの号泣でした。

(姪は犬がどこかで鳴いてる?と思ったとか?)


それ見てまた、みんな号泣。


やっぱり、若すぎる別れは

最後の花を供えたお別れは、

言葉にできない感情爆発の場となりました。


実はそこで、不思議な出来事がありました。

私の不注意で、とんでもないことに

なりそうだったのですが、なんと!

回避できた、その出来事。


これは、次回に…