お社は昔ながらに其処に在りました。
右手には椎の木、この木は十五夜の綱引きの時、その綱を作るのにその枝をかりたものです。
葛を芯にした太い綱は満月の夜、この椎の木から引出されたのです。
権現様は子供たちの遊び場でした。
建直される前の古い古いお社でした。
堂廻りと云って、ベンガラ塗りの赤いお堂を廻ったものです。板にペッタリ張りつくようにして、かくれんぼやオハジキ、オテダマ、人形遊び、ままごと遊び、日が暮れるまで、帰へりには石を蹴り蹴り帰りました。
七月九日、権現様の6月灯の夜は楽しいものでした。
鳥居の処に横長の大灯籠が掲げられ灯りが入ると、境内に張りめぐらされたしめ縄に吊るされた小さな灯籠に男の子達もロウソクの灯をともしました。男の子達が一人一個ずつ自分で作ったものです。
廻りドーローもあり、四角なトーロー筒型のもの、字を書いたもの、侍の繪を描いたもの、人形の繪、馬の繪、武者の繪、マンガ、境内には電灯はなく灯籠の明りでほんのりと、白絣の男の子、赤い模様の女の子、二才(ニセ・青年)どん浴衣はのりでバリバリに張ったのを、まくり上げ、娘さんは薄化粧に絹の着物、ほんのりと浮立つ姿。
社の横のせせらぎの辺から螢がポカリポカリと青白い光を引いて、境内の暗がりの中を丸い光が無数に浮遊しています