古里物語四部5-2
北満に居ると云う長男清兵エ氏の学生時代、同文書院の時のオーヴァー だと云うお古をを着て炉端にドカッと座り煙草をキセルで吸っていた。プッとキセルを吹くともえさしのキザミ煙草を掌に受けて、次の煙草を吸いつけている、大きな掌である、皮も厚いのであろう薄い手の皮ではヤケドをするだろう。
母の話によると、母の小さい時母のおぢいちゃんという人が健在で、そのおぢいちゃんが大きい人でやはり漁網を商っていて、金の勘定をしているのを見たと云う、母の母曽野に金のことを聞くと十両だと云ったとを覚えていると云う、明治にも十両と云ったのかと変な話だけれど、清吉伯父はその祖父に似ているのかも知れない。
「伯父さん、洋服 のきれ地を持って来ましたよ。」毛織の端切れや絹の生地、ベルベット やビロードを袋から出すのを見て伯父は目を細めた「うんこりゃいい、先ず足袋 を作るかな。」と云い私の前にオーヴァーの袖口を突然出してみせた。「どうぢゃ分かるか、袖口が切れていたので接いだのぢゃよ。」と。
何とその袖は傷一つない一枚の生地で出来上がっているようなのです。
洋裁師である私もかけは接ぎはやるけどこれは私も及ばぬ技術です。
グローヴのような手でよくもこんなに出来るものと呆れる。
清吉伯父は時計屋に弟子入りしたこともないのに時計も修繕すると母に聞きました。
製茶工場をやっている伯父は木製の製茶機も自分で作ったと云う。
「ほらほら茶柱がたっちょいもんど。」
さよ伯母がお茶 を持って来てくれた。