下取りに関しての諸手続きは、滞りなく進行しました。
電話で大体のことは聞いていましたし、書類に判を押すだけでした。
所要時間からすれば20分程度です。
でもその時私たちは、1時間程度、少しだけお互いの話をしていたように思います。
いつもは、もちろん営業と一客程度の、身の上話でしたが、
その時だけは、いわゆる同世代の会話になっていました。
ハグをした瞬間、お互いの時間がほんの少し止まりました。
私は事前に、卑怯ながらに、心の準備をして彼に飛び込んだのに
ハグをしたら、「ありがとう」って
何気なく、これは喜びの感情を表しているだけなんだよって
示すために言おうと思っていたのに
いざ彼に飛び込んだ私は、ドキドキしすぎて、何も言えなかった。
最低です。
彼はというと、もちろん、ただ驚いていました。
軽くハグをした私は、すぐ彼から離れ、「すごいね。本当にありがとう」と笑顔で
伝えました。
それから間髪いれずに私は、彼に感謝の気持ちを伝えました。
間をあけては、意識がそちらに流れてしまうから。
飛び込んでおいて、こんなこと言うのもなんですが
ここは自宅マンション。
彼には、一線を守ってほしかった。
一線をはっきりと守り続ける彼に、私はひかれていたから。
その日のことは今でもたまに思いだします。
意外と背が高いんだな。
そう感じました。