電車のホームに向かう道
人々が無表情で
行列をなして足早に歩く

「私」もその無表情行列の
一員として歩きながら
その行列を傍観する

なんとなくここにいて
なぜか逃げられないこの場所

なんで今ここにいるんだろうと
ふと気づく

会社の書類を抱え
仕事のパソコンを持ち

そして何かそれ以上の
「今」
という現実を背負って
生きている

なんでここにいるのかと
ふと気づくそのとき

背負っている「今」を
すべて背中から取っ払って
自由になって走りだしてみようか
なんて…
そんなことできるはずもないって
「私」を鼻で笑う





ここじゃない!と叫んでみたら
どうなるだろう

今日を頑張ったご褒美に
「今」を捨てて
あなたに会いに行きたい
その欲が消えてくれない

会えないってわかっているから
体から魂が抜けていく

ふと
涙腺がたまにゆるむ

あなたに会いたい
ただそれだけなのに
叶うわけもない

くるっと踵を返して
手に持つ書類も
肩にかけるパソコンも
ここに生きる「私」も
もう嫌!と叫んで
すべての「今」をここに置き去りにして
あなたに会いに行こうか
…って
叶うはずもないね



この世の「あなた」が
あの世にも引き継がれるなら
この世の「今」も
あの世に引き継がれるのかな

そしたらやっぱり
あの世でも
私はあなたに
きっと会えないって

永遠にこのまま…
ってため息をついて
また「今」を生きる

「今」は
つまり「私」…

「私」って誰なんだろう…
と思いながらも

「今」を
「私」を
生きていくしか道はない