1章 明日の夢
1話 プロローグ
「よく有ることだ。この世界は残酷で悲惨で
救い様がない。
どっかの宗教か。
今更誰が本気になってそんな事を声高に
わめき散らすのか。
あぁ、うるさい。
俺の唯一の至福を土足で踏みにじる馬鹿者に
制裁を加えなければ腹の虫が収まらん…。」
急に浮遊感を覚えた。
が、一瞬で重力に弾き返された、らしい。
まだ、今自分に起きた現実が
受け入れられない。
「なんだ?あいつは、敵は何処だ」
敵?…敵って何だ?
いつから俺は戦場に赴いたのだろうか。
そもそも戦いを知らない俺が敵とは、
夢とは怖いものだ。
端から見れば今の俺はさしずめ多重人格者に
間違われてもおかしくない。
そう、夢うつつの体と覚醒した精神。
相反する状態。
いわゆる寝起きだ。
「ねむ、ってか。あぁ?…あぁ。夢だな。」
確かに夢だ。幸いこの家の住人達は早起きが
好きらしく8時には裳抜けの空だ。
現在…あぁ昼だな。
「あっつ。」
秋も終わりだと言うのに毎日異常な位暑い。
温暖化的な何かの影響だろうか?
まぁ生きてるうちに宇宙船で新天地なんて
有るわけもないだろう。
無意識にエアコンを強制労働に駆り出す。
奴もまさかこの時期に冷やすとは夢にも
思わなかっただろう。
しかし暑いのだから仕方ない。
君に働いて貰わなければ現代人は夏冬は愚か、
春夏秋冬生きては行けないのだ。
本当に君には敬意を評するよ。
現代文明万歳と。
2話
今日も朝から秋晴れと言うに遜色ない
清々しい青空だ。自然と笑顔になる。
あいつの家に近づくまでは。
あの家が見える度胃の辺りがシクシク痛む。
「何で俺がこんな事を!」声には出さないが
胸のうちで叫んだ。
そもそも生徒会長が自ら不登校生徒を迎えに
行く構図がわからん。
高校に上がってまで不登校するなり進学など
しなきゃ…いや辞めよう。それ以上は人権に
関わる。
「はぁ、まさに無駄骨だ。」
インターフォンを押す指にためらいが残る。
「はい」
返答したのは恐らく奴の母親だ。
恐らくとは、入学してから今日までこの家の住人と顔を合わした事がない。
だが仕方ない。「僕です。」
それで全て伝わる間柄にはなっていた。
おかしなものだ。全く。
まぁ返答も月並みになってきた。
「ごめんなさい、今日もお休みしたいって」
したいって、あんた多分保護者だろ。
確信ある言葉を選んでくれ。
しかし俺も月並みだ。
「お大事にとお伝えください。」
全く。無駄な登校時間のロスだ。
さて、気を取り直して登校しようか。
何の変鉄もないただただありふれた
青春の学舎へ
正直吐き気すら催すが。
下らん奴等に「生徒会長!」と崇められるのは癖に成るらしい。
