去る10月下旬に、阪急・阪神ホテルズで発覚したメニュー表示問題は、その後あちこちの有名ホテル、デパート、レストランで発覚し、現在も止まるところを知らない。この事態は消費者の「食」に対する信頼を失うばかりか、世界から注目されはじめた「日本食」の海外展開など、「クールジャパン」の取り組みに水を差すものである。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック招致成功のキーワードだった「おもてなし」にも、イメージダウンの影響が懸念される。関係業界の一部には「誤表示」とか認識不足と表現して、事件が拡大しないよう、最初は画策していた節がある。しかし多くの事例では景品表示法における「優良誤認」、すなわち故意に実際よりもよく思わせる行為として、是正措置の対象となるものだ

 このような偽装はどうして発生したのだろうか。中国料理の協会では以前から、「小海老」を「芝海老」と呼ぶ慣習があり、故意とはいえないケースもあるが、誤解を生みかねないので早急な是正が必要だ。多くのホテルやデパートでは、レストラン部門はテナントになっている。テナントに任せきりではチェックが出来ない。またコスト削減の圧力がテナントにも及び、材料の質を落としてしまう傾向がある。

 関係業界はテナントとの良好な関係を保ち、悪しき商慣行を徹底的に排除すべきである。また政府においては、メニュー表示の問題に限らず、食品表示全体の問題として、抜本的な改善策を策定すべきである。