この国では、ゴミ袋があまり縛られない。
中身が見える。
匂いが漏れる。
外にこぼれることもある。

最初は単なる雑さだと思った。
だが、これはもっと構造的なものかもしれない。

経済学で学んだ言葉がある。
externality(外部性)。

自分の行動が、他人に影響を与えるのに、
そのコストを自分が負担していない状態。

タバコの煙。
騒音。
環境汚染。

ゴミも同じだ。

袋をしっかり縛らない。
手間は省ける。
だが匂いのコストは周囲が払う。

これは負の外部性だ。

競争社会では、個人最適が優先される。
効率が正義になる。
配慮はコストになる。

だから、少しの不便や不快は、
社会のどこかに押し出される。

だが、ほんの少し袋を強く縛るだけで、
社会全体の効用は上がる。

ほんの少しの努力で、
全体最適に近づく。

それでも多くの人は縛らない。

怠慢なのではない。
優先順位の問題だ。

競争が強い社会では、
自分を守ることが最優先になる。

外部性は、その副作用だ。

私は、ゴミ袋を見るたびに思う。

社会は善悪でできていない。
設計でできている。

そして設計は、
人間の行動を静かに決めていく。

匂いのする袋は、
社会の思想の縮図なのかもしれない。