今起きている現状を把握するのに
少し時間がかかった。
夢を見ている・・?
それにしてはやけにはっきりしている
小さいころによく遊んだその家は、なつかしさでいっぱいで
不思議と恐怖を感じることはなかった。
門を入り、家の中に足を踏み入れようとした時
祖父の優しい声が中から聞こえた
「よく来たね 待っていたよ」
家の中はきちんと片付けられていて、
空気さえ動いていないようだ。
奥の部屋を覗き込む
我が家の玄関先に置かれたあの大きな鏡があった。
祖父が鏡の前に立っていた。
中学、高校と全く寄り付こうとしなかった私は
祖父の記憶は小学生で止まっていた。
もちろん葬儀にも出席していない。
しかし、その年老いた老人は祖父である事はすぐわかった。
そして
祖父の話は、到底理解できるものではなかった。

