橋本龍太郎（はしもと・りゅうたろう、1937－2006）は、第82・83代の総理大臣である。その端正な顔立ちと「戦後世代」の若さで国民の注目を集めた。

橋本は、父・龍伍（りょうご、1906－1962）の急死を受け、その地盤を引き継ぎ政治家となった。父と当選同期でもあった佐藤栄作（さとう・えいさく、1901－1975）を政治家の手本として政界を歩み始める。佐藤派から田中派、竹下派と一貫して自民党主流派に属した。

1978年、大平正芳（おおひら・まさよし、1910－1980）内閣に厚生大臣として初入閣を果たす。その後も自民党幹事長や大蔵大臣、通産大臣などを歴任した。竹下派内では7奉行の1人に数えられ、総理総裁候補として注目される。一方で小沢一郎（おざわ・いちろう、1942－）らとは派内の主導権争いで激しく対立した。このことが自民党の下野に影響したのである。

1996年、橋本は、社会党の村山富市（むらやま・とみいち、1924－）の後を受け総理大臣に就任した。「行政改革」「財政構造改革」「経済構造改革」「金融システム改革」「社会保障構造改革」「教育改革」の「六大改革」を掲げスタートする。これは、中曽根康弘（なかそね・やすひろ、1918－2019）内閣時代に運輸大臣として国鉄の民営化を担当した経験などが生かされることとなった。

まず橋本は、中央省庁の再編や郵政3事業の一部民営化といった行政改革に取り組む。しかし、橋本が目指した理想の改革案は、党内から強い反発が起きた。橋本の肝いりで始まった「行政改革会議」も挫折したのである。

一方で、普天間飛行場の返還を始めとする沖縄問題や日米同盟などの外交問題では実績を残した。そして橋本は、財政構造改革に取り組むも、相次ぐ金融機関の破綻やアジア通貨危機によって逆風にさらされる。すでに決定していた消費税率の3％から5％への引き上げも相まって、急速な景気悪化を招いた。その結果、1998年7月の参院選で自民党は大敗し、橋本内閣は総辞職となった。