富久長 ほろ酔い日記 -18ページ目

留めました

1月27日(昨日)、中汲み槽しぼりの留仕込みを終えました。
4000リットル以上入るタンクのかなり上までモロミが来ています。

仕込み作業として忙しいのはこれでひと段落。
これからは櫂入れによる攪拌と温度管理が主になります。
仕込みが終わってからの修正はほとんど効きませんので、お酒の出来具合に関する大方の勝負はもうついていると言ってよいかもしれません。
ただ、今後急に気温が下がったりすると、モロミが元気なくなってしまったりするので、注意はもちろん必要ですが・・・。

仲の仕込み

1月26日、つまり昨日ですが、仲の仕込みをいたしました。
前日タンクに移しておいた添モロミに、麹・水・蒸米を入れていきます。
添が十分に踊って(添仕込みの翌日は仕込みを休み、酵母を元気よく増殖させます。その様子から、この日を「踊り」と呼びます)いたため、発酵熱で品温が高くなっています。

添・仲・留と進むにつれて仕込みの予定温度は低くなります。
現在ではモロミを冷やすための設備がいろいろありますが、昔は外気温の低さによって蒸米を冷やすことに頼っていたことでしょう。
寒仕込みにはそのような側面があるのですね。
今はむしろ、気温が低すぎる方が不都合があるような気がいたします。

夕方になると

朝に仕込んだ添は、夕方になると盛り上がってきます。
蒸したお米が水を吸って膨張しますし、酵母が元気に増殖することによってガスも出てきます。
モロミ中で発生したガス(主に炭酸ガス)が閉じ込められて、蒸米などを押し上げるのですね。

タンク全面が盛り上がってきたら、ガスを抜くために櫂を入れて攪拌します。
櫂を押し込むたびにガスがガフーッと音を立て、なかなかダイナミックですよ。

添の仕込み

前日に酒母を移し(モト卸しと呼びます)水を汲んでおいたものに、蒸米を仕込みます。
蒸しあがったばかりの米は温度が当然高いので、風を当てて予定温度まで冷まします。
酒母の元気さや米の硬さなどによって多少変化をつけることはありますが、今回は12度を目標としました。

仕込みが済んだら、周囲にはね飛んだ米やモロミを丁寧にふき取ります。
液面は水を打ったように静かですね。

添タンクへ移します

酒母の成分ができあがったら、添(そえ)用のタンクへ移します。
お酒造りでは、初添・仲添・留添の三回にわけて仕込みます(三段仕込み)。
富久長ではそれぞれ添・仲(なか)・留(とめ)と呼んでいますし、他のお蔵でも同様のことが多いようです。

タンクへ移す前に、水を測って汲んでおきます。
容量を測るには「さし」と呼ばれる道具を用います。
これは物差しでタンク上面からの深さを計るもので、物差しなので「さし」、そのままですね。

十分に酵母が増殖したら


次第に硫化臭も消えて、酵母によってそれぞれの香りがタンク内に充満してきます。
中汲み槽しぼり用の酵母は、花のような甘美な香りですね。

最高の温度を数日保ちますと、「優良酵母を大量に培養する」という酒母の目的は達せられ、酒母の成分も整ってきますので、今度は本仕込みに使用するまで保存してやる必要があります。
といいますのは、酒母のあいだにも発酵が進み、アルコールが増えていますので、あまり発酵が進みすぎますと、今度は逆に高濃度のアルコールで酵母が弱ってしまうからです。
だいたい使用時にはアルコールが10%程度ありますから、酒母と言えどもちょっとしたお酒です。

頃合を見計らって氷を入れた筒をタンクに入れ、出番をじっと待ちます。

酵母は盛んに増殖します

順調に経過を続けて品温が上がったので、19度程度を数日維持するようにしました。
このころになると、特に加温操作をしなくても、発酵などによる発熱で温度が保たれるようになります。
そのことから「休み」と呼ばれるのが面白いところです。

暖気樽の2本目を入れるくらいから酵母の特徴が表われてきて、酵母増殖が盛んな休み頃には特に顕著になります。
「中汲み槽しぼり」に用いる富久長専用酵母(富久長スペシャルということで、FSなどと呼んでいます)は香気成分をたくさん作る酵母で、その香りの前段階として硫黄のような臭いが立ちこめます。
温泉に入ったようなこの臭いが強いほど、後ほど香りも高くなります。

写真では臭いをお伝えできませんが、今回の酒母も出来は上々のようです。

暖気樽

打瀬で温度を落としてやったら、今度は暖気(だき)樽というものを入れて、徐々に温度を上げてやります。
これは、打瀬の時に使用した樽に今度はお湯を詰めて酒母に入れます。
それにより、米が溶けすぎることもなく、はじめは少なかった酵母がだんだんと増えていくのです。

一日に一度、3日か4日かけてじわじわと温度を上げていくと、シュワシュワと盛んに増殖・発酵して、沸きつきと呼ばれる状態になります。
写真ではたぶん分からないと思いますが、「あぁ元気だな」と思うような感じ。

この時期は気温が低いので、温度が下がりすぎないように注意しながら酒母造りを進めます。

打瀬

比較的高めの温度で仕込み、汲み掛けを一日行うと、翌日にはかなり甘くなります。

酒蔵で「甘(あま)」と言うと、麹(場合によっては酵素剤を使うこともあります)によってお米を糖化させたものを指し、酒粕から作る甘酒とは全く異なるものです。
酒母の場合には酵母や雑菌の繁殖を抑える乳酸が入っていますので、いわゆる甘とは違うのですが、その酸味などがあるせいで、普通の甘よりも美味しく感じられます。

十分に糖化したら、筒に氷を入れて温度を下げてやります。
これは打瀬といいまして、糖化と酵母の増殖のバランスをとって、健康な酵母をたくさん育てるための下地とするのです。

中汲み槽しぼり仕込んでます

中汲み槽しぼりは今、酒母の段階です

富久長の顔とも言うべき香り高い純米吟醸酒「中汲み槽しぼり」。
現在は酒母のタンクでじっくりと酵母を培養しているところです。
ブログを始めたのが酒母の仕込みより遅かったのでタイムラグがありますが、お酒のできるまでの様子をお伝えしようと思います。
日付を遡ってアップすることができませんので少々日にちを掴みづらいかもしれませんが、どうかご了承ください。

酒母仕込みの日は1月11日。
水に麹と米を仕込みます。
予定通り21度くらいに仕込み、まずは麹の酵素で米を溶かしてやります。
写真は「汲み掛け」といって、下の方に溜る酵素液を全体に回しがけ、溶解を促進させているところです。