一昨年に癌の手術をした。心配はなきにしもあらずだったがまさか自分がと日常はバイアスがかかっていた。抗癌剤治療と入院、しんどかった。退院しても職場復帰までの数ヶ月、味覚障害や体力回復など先の見えない不安との闘いが続いた。一人暮らしだから自分自身がしっかりせねばあっと言う間に奈落の底だ。今でも基本的には何ら変わらないのだが、抗癌剤の副作用で腎不全になり食事や体調など生活管理は一層不安要素になってしまっている。この先どのように生きていくべきか真剣に問う毎日だ。しかし、いつでもどこでも自分は一人ではないとの直感を得たのは闘病あってのことだった。その人生の基本中の基本を自覚せずに長い間生きてきた自分がいかに愚かだったか振り返ると後悔に苛まれる。しかし今、生きるという使命に畏敬の念を感ずることができるようになった。いうなれば神の存在かもしれない。ニーチェに、はっきり言う。神は殺されてなどない。なぜなら神がいなければ一瞬たりとお前の存在などなかったからだ。
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