前回は、キリスト教の、「無条件契約」と「条件付契約」という教えついて書かせていただいた。

今回も同じテーマで書かせていただきたいと思う。

 

聖書に記された「契約」とは、神様が御示しになられた「未来の約束事」であり、「予言」とも言える。


「無条件契約」とは、神様が無条件に、「わたしは~する」と仰せになられた契約。

つまり、何があっても実現される契約のことである。

 

一方、「条件付契約」とは、神様が人間に、「もしあなたが~するなら、わたしは~する」と仰せになられた契約。

つまり、人間が神様に忠実か不忠実かによって、実現される内容が変わる契約のことである。


前回は旧約聖書から、「無条件契約」の具体例として、神様が、アブラハムに誓われた、土地の契約(カナンの地)について書かせていただき、「無条件契約」は必ず実現するが、人間の信仰如何によって、実現が先送りされる場合がある。

ということを申し上げた。

 

そこで今回は、もう一方の「条件付契約」の具体例として、神様がソロモン王に御約束された契約について書かせて頂きたいと思う。


ダビデからソロモンに引き継がれた神殿建設
 

ソロモン王は、ダビデ王の子として王位を継承し、イスラエル史上最も国を栄えさせた王である。
このソロモン王の時代に壮大な神殿が建設された。

しかし、この神殿計画は、もともとダビデ王が計画したものだった。

 

それまでは、「天幕」で祈りが捧げられていた。

「天幕」とは、モーセの時代に神様の御命令によって造られたもので、布で覆われた大きなテントの中に「十戒の箱」が収められ、荒れ野を移動するときは天幕も移動した。

それ以来ずっと、神様に祈りを捧げる場は「天幕」であった。

 

ある日、ダビデ王は、「神の箱が天幕の中にあるのに、自分は杉の家に住んでいる。壮大な神殿を建てたい」と願った。

神様は、そのようなダビデの心を御喜びになり、ダビデを祝福することを御約束された。

しかし、ダビデ王の時代に建設することを御許しにならず、息子のソロモン王の時代になってから造るように御命じになられたのである。

 

そこでダビデは、神の霊感を授かって描いた設計図を息子のソロモンに託し、神殿建設に必要な木材や石、金銀宝石など、あらゆるものを準備した。

そしてダビデ王は自分の個人財産からも寄贈し、各部族の族長や高官たちも自ら金銀宝石などを寄贈して多くの物が集まった。

そしてダビデ王は会衆の前で、主をたたえて祈りを捧げた。

 

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わたしたちの神、主よ、わたしたちがあなたの聖なる御名のために神殿を築こうとして準備したこの大量のものは、すべて御手によるもの、すべてはあなたのものです。
わたしの神よ、わたしはあなたが人の心を調べ、正しいものを喜ばれることを知っています。わたしは正しい心をもってこのすべてのものを寄進いたしました。

また今、ここにいるあなたの民が寄進するのを、わたしは喜びながら見ました。
わたしたちの先祖アブラハム、イサク、イスラエルの神、主よ、これをあなたの民の心の思い計ることとしてとこしえに御心に留め、民の心を確かにあなたに向かうものとしてください。
わが子ソロモンに全き心を与え、あなたの戒めと定めと掟を守って何事も行うようにし、わたしが準備した宮を築かせてください。

(歴代誌上29:16-19)

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と、神様に祈った。

ダビデは、自分の時代には建てられなくても、次の時代のために、純粋で一途な信仰心をもって、神殿建設の準備を進めたのである。

 

ソロモンの祈りと神様の御言葉

 

ダビデ王が亡くなり、ソロモン王の治世となった。

ソロモンは神様より大いなる知恵を授かり、国もますます栄えていった。

そしてソロモンは、神殿と王宮の建設を命じ、そのすべてを終えたとき、神様に次のとおり祈りを捧げた。

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あなたはその僕、わたしの父ダビデになさった約束を守り、御口をもって約束なさったことを、今日このとおり御手をもって成し遂げてくださいました。

イスラエルの神、主よ、今後もあなたの僕(しもべ)、父ダビデに約束なさったことを守り続けてください。
あなたはこう仰せになりました。
『あなたがわたしの前を歩んだように、あなたの子孫もその道を守り、わたしの律法に従って歩むなら、わたしはイスラエルの王座につく者を絶たず、わたしの前から消し去ることはない』と。
イスラエルの神、主よ、あなたの僕ダビデになさった約束が、今後も確かに実現されますように。

神は果たして人間と共に地上にお住まいになるでしょうか。
天も、天の天も、あなたをお納めすることができません。
わたしが建てたこの神殿など、なおふさわしくありません。
わが神、主よ、ただ僕の祈りと願いを顧みて、僕が御前にささげる叫びと祈りを聞き届けてください。
そして、昼も夜もこの神殿に、この所に御目を注いでください。
ここはあなたが御名を置くと仰せになった所です。
この所に向かって僕がささげる祈りを聞き届けてください。
僕とあなたの民イスラエルがこの所に向かって祈り求める願いを聞き届けてください。
どうか、あなたのお住まいである天から耳を傾け、聞き届けて、罪を赦してください。

(歴代誌下6:15-21)
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そのようにソロモンは、神殿を「神の御座」として御認めくださるように祈りを捧げた。

すると、神様はその願いを御聞き届けになり、次のとおり仰せになられた。

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「わたしはあなたの祈りを聞き届け、この所を選び、いけにえのささげられるわたしの神殿とした。
わたしが天を閉じ、雨が降らなくなるとき、あるいはわたしがいなごに大地を食い荒らすよう命じるとき、あるいはわたしの民に疫病を送り込むとき、
もしわたしの名をもって呼ばれているわたしの民が、ひざまずいて祈り、わたしの顔を求め、悪の道を捨てて立ち帰るなら、わたしは天から耳を傾け、罪を赦し、彼らの大地をいやす。
今後この所でささげられる祈りに、わたしの目を向け、耳を傾ける。
今後、わたしはこの神殿を選んで聖別し、そこにわたしの名をいつまでもとどめる。
わたしは絶えずこれに目を向け、心を寄せる。

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神様は、ソロモンが建てた神殿を、神の御座として御認めくださったのである。

そして、次のとおり仰せになられた。

 

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もしあなたが、父ダビデが歩んだように、わたしの前を歩み、わたしがあなたに命じたことをことごとく行い、掟と定めを守るなら、あなたの父ダビデと契約して、『あなたにはイスラエルを支配する者が断たれることはない』と言ったとおり、わたしはあなたの王座を存続させる。


もしあなたたちが背を向け、わたしの授けた掟と戒めを捨て、他の神々のもとに行って仕え、それにひれ伏すなら、わたしは与えた土地から彼らを抜き取り、わたしの名のために聖別したこの神殿もわたしの前から投げ捨てる。
こうしてそれは諸国民の中で物笑いと嘲りの的となる。
かつては壮大だったこの神殿に、そのそばを通る人は皆、驚き、『この地とこの神殿に、主はどうしてこのような仕打ちをされたのか』と問うであろう。
そのとき人々は、『それは彼らが自分たちの先祖をエジプトの地から導き出したその先祖の神、主を捨て、他の神々に付き従い、これにひれ伏し、仕えたからだ。それゆえ、主は彼らの上にこのすべての災いをもたらされたのだ』と答えるであろう。

(歴代誌下 7:13-22)
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と、神様は仰せになられた。

 

神の戒めを守るなら、神殿をいつまでも神の御座とし、王座を存続させる。

しかし神の戒めを捨てるなら、約束の地から追い出し、神殿も投げ捨てる。

という「条件付契約」であった。

 

神様の御心から離れてしまったソロモン王

 

さて、そのように神様に敬虔な祈りを捧げたソロモン王だったが、栄華を極めたソロモンは、次第に神様の御心から離れてしまう。
神様の御命令に背いて異国の女性を数多くめとり、700人の妻と300人の妾を持った。

そして晩年は妻たちに心惑わされ、偶像を祀る高台を築き、イスラエルの地で偶像崇拝の儀式が執り行われるようになったのである。

 

神様はソロモンに対して、2度も現れて戒められたが、ソロモンは聞き従わなかった。
その結果、神様より次の御言葉がソロモンに下された。

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「あなたがこのようにふるまい、わたしがあなたに授けた契約と掟を守らなかったゆえに、わたしはあなたから王国を裂いて取り上げ、あなたの家臣に渡す。
あなたが生きている間は父ダビデのゆえにそうしないでおくが、あなたの息子の時代にはその手から王国を裂いて取り上げる。
ただし、王国全部を裂いて取り上げることはしない。
わが僕ダビデのゆえに、わたしが選んだ都エルサレムのゆえに、あなたの息子に一つの部族を与える。」

(列王記上 11:11-13)
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この神様の御言葉は、「無条件契約」である。

したがって、ソロモンが何をしようとも変わることがない未来であった。

 

ソロモン王が生きている間は、父ダビデ王の信仰の功徳によって王座を存続させるが、ソロモンの息子の時代には王国を分裂させる。

という「確定された未来」を、神様はソロモンに言い渡されたのである。

 

もしもソロモンが、神様からの2度にわたる戒めに聞き従い、悔い改めていたら未来は変わっていたであろうけれども、戒めを無視した結果、未来は確定されてしまったのだ。
 

そして、ソロモンの死後、神様のお言葉どおりとなった。
イスラエル王国は、ソロモン王の家臣であるヤロブアムが10部族を率いて「北王国イスラエル」をつくり、ソロモンの息子レハブアム王が率いる「南王国ユダ」と分裂してしまったのである。

 

また、ソロモン王以降は、北王国も南王国も、国の中に入り込んだ異民族の偶像崇拝の影響を、何百年もの間受け続け、民の信仰は堕落していった。

その間、神様は何人もの預言者を遣わされ、王たちを戒められたが、歴代の王は一部の王をのぞき、神様の御言葉に聞き従わず、とうとう約束の地は他国に奪われ、イスラエル民族は捕囚となり、神殿は破壊されてしまったのである。

 

神様がソロモンに仰せになられた、

「もしあなたたちが背を向け、わたしの授けた掟と戒めを捨て、他の神々のもとに行って仕え、それにひれ伏すなら、わたしは与えた土地から彼らを抜き取り、わたしの名のために聖別したこの神殿もわたしの前から投げ捨てる。」

という未来が実現してしまったのである。

そのように、神様が御示しになられる未来には、「神様の御意志によって確定された未来(無条件契約)」と、「人間の選択によって神様が変えてくださる未来(条件付契約)」とがあり、後者の未来は、我々人間の信仰と意志によって決まる。

ということを、聖書の記述は物語っている。


そこで次回は、「人類の遠い未来は確定されているのか」ということをテーマに探求させていただきたいと思う。