天心聖教の起源の地が埼玉県加須市大越にあり、「聖地大越」と呼ばれている。

この聖地大越が「市街化調整区域」の中にあると、最近になってはじめて知った。


農業を営んでいた友人が市街化調整区域に住んでいるので、どんな区域かおおよそは知っていたが、これを機に改めて話を聞き、自分でも調べてみた。

 

街づくりと深い関係があり、とても興味深かったので、今回は、宗教の話と離れるが「市街化調整区域」について書かせて頂きたいと思う。
雑談としてお付き合いいただけれれば幸いである。

市街化調整区域とは

「市街化調整区域」とは、都市計画法に基づく「市街化を抑制する区域」のことで、原則、「建物を建ててはいけない区域」のことである。

市街化調整区域の土地を買い、家を建てようと思っても原則建てられない。

すでに建っている建物でも、建て替えられるとは限らない。

そのように、建築に対して厳しい規制のある区域なのである。

 

しかし、全くダメという訳ではない。

その区域によって一定規模の住宅なら新築が可能だったり、既存の建物の総建築面積と同じ程度の規模で、同じ用途であれば、建替えられる場合もある。

 

しかし原則「建物を建ててはいけない区域」であり、ある程度大規模な建物となれば、公共事業や、地元にとって公益性の高い施設などでない限り、はじめからまず無理である。

 

この市街化調整区域は、大都会にはほとんど無い。

また逆に、人里離れた山奥などにもあまり無い。

どちらかと言うと、都市周辺の郊外に多い。

 

そういった区域で土地を買う場合には注意が必要である。

役所のホームページで「市街化調整区域」を地図で確認できる市町村もあるが、役所に直接聞くのが一番である。

役所に連絡して「この土地に、このような建物を建てられますか?」と聞けば、すぐに教えてくれる。

 

なぜ建ててはいけないのか?

では、なぜ建物を建ててはいけないのか?

順を追って申し上げると、
昭和43年に制定された都市計画法に基づき、「都市計画区域」というものが、全国の至るところにある。
「都市計画区域」とは、計画的に街づくりを行っている区域のことで、国土面積の約1/4を占め、その区域は次の3つに区分されている。

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1.市街化区域  :市街化を促進する区域

  (国土面積の約4%しかないが、そこに人口の約7割が住んでいる)

2.市街化調整区域:市街化を抑制する区域

  (原則として家を建ててはいけない区域)

3.非線引き区域: 区域の線引きを保留にしている区域。

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このように都市計画は基本的に、市街化を促進する区域と、市街化を抑制する区域を分けることによって進められているのである。

「市街化区域」と「市街化調整区域」を分ける理由

もしその区分けをせず、「どこに何を建てても自由ですよ」となったらどうなるか?

田園地帯に工場やショッピングセンターが建ち、住宅をはじめ、さまざまな施設が無秩序に点在してしまう。

そうなれば、広範囲にわたって、道路、水道、電気、ガスなどのインフラを整備して、それを維持しなければならず、膨大な費用がかかってしまうため、自治体の財政ではとてもまかない切れない。

様々な施設が点在し、インフラが整備されなければ街が住みづらくなってしまう。

そして何よりも、農地が乱開発されれば、農業が衰退してしまう。

そういった事がないように、市街化を促進する「市街化区域」と、市街化を抑制する「市街化調整区域」を分けて、住みやすい街づくりを計画的に進めているのである。

そうすれば、「市街化区域」に人が集まり、そこに住宅・学校・病院・企業・商業施設・レジャー施設などが集中し、インフラ整備も効率よく進めることができ、生活に便利で住みやすい街ができる。

そして、魅力ある街になれば、住む人や訪れる人が増え、経済活動も盛んになって財政が潤い、街を徐々に発展させることも可能となる。

同時に、農業を守る事もできる。

 

このように「市街化区域」と「市街化調整区域」がそれぞれ役割分担することによって、街づくりは進められているのである。


家が建てられるケース

さて、先ほど申し上げたとおり、市街化調整区域でも、建築が全くダメという訳ではない。開発許可や建築許可が降りる場合もある。
 

たとえば、農家の住まいが農地から遠かったら不便である。
そこで、農業従事者であれば、所有する農地の一部を宅地に変えて家を建てることは、一定の範囲で許されている。

しかしその土地を、農家以外の人が買った場合、条件が厳しくなり、自由に建て替えることはできない。
それを簡単に許可したら普通の宅地と変わらず、そのような土地が増えたら市街化が進んでしまうからである。

そうならないように、市街化調整区域には、細かくて厳しい規制が設けられている。


その規制内容は市町村によって違い、同じ市街化調整区域内でも違う。

「優良な農地」、「優れた自然環境を有する区域」、「歴史的建造物や史跡がある区域」、「災害の発生のおそれがある区域」などは規制が厳しい。

 

その逆に、規制がゆるい区域もある。
例えば、「都市計画法第34条第11号」に指定された市街化調整区域は、簡単に言えば、「ここは市街化区域に近いし、家もある程度まとまって建っているから、規制をゆるめてもいいでしょう」

と自治体が認めた区域で、一般住宅なら建てられる可能性がある。

ただ、将来は規制内容が変わり、建てられなくなるかも知れない。

 

したがって、これから土地を買って家を建てる場合は、農業従事者の方々は別だが、そうでなければ、自治体の都市計画に沿って「市街化区域」の土地を購入したほうが、地価は高いが、将来売却がしやすいので無難だと、友人は言っていた。

 

もちろん、土地を購入する目的は、建築のためだけではない。

他に目的があり、規制内容を承知の上で「市街化調整区域」の土地を買うなら、何も問題はない。


ただそれでも、不動産屋さんの情報だけでなく、一応は自分でも役所に連絡して確認したほうが、将来的にも良いと思う。

 

おわりに


今回は、宗教に関するテーマではないが、一つだけ神事と感じたことがある。

聖地の周辺は、田が広がり、昔からの旧家があって、のどかな風景に囲まれている。

その環境は、神様が御降臨された130年前と、それほど大きくは変わっていないと思う。

それは聖地大越の区域が「市街化調整区域」だったからだろう。

神様の広大無辺な御計画を感じた次第である。