『舟越桂展によせて』 冬の本 『冬の本』 僕が冬の本を見て感じるのは 際立った清楚さと憂いの表情である 少年のようにも 少女のようにも捉えられる 立原道造の記憶が僕の中に立ち上がる 命の鼓動を赤としたとき 白は夭折の詩人が残した 書きかけのそして書かれなかったページのようだ 真冬の放物線は激しい吹雪となり 澄み切った真っ青な空をうつすが 命の鼓動は雪に閉ざされて届かない 届かない鼓動に心澄ますとき 別離にも似た表情で 愛おしく憂いに満ちて冬の本は僕の前にある