『遅い振り子』
金属の板にボルトで止められた腕が振り子となって
時を刻む 遅くて静かな時だ
『遅い振り子』はこれからの作者の新たな歩みの一歩を予感させる
それは具象から抽象へリアルからシュールへの予感だ
振り子はその間を往復する
僕がまだ十代の頃、時は無限に近く存在していた
それが錯覚だったと気づくまでそう長い時を必要としていなかった
多くの別離があり同じ年齢の人も黄泉路へ赴いた
生と死を往復する振り子は年々早くなり時の足音が真後ろを追いかけて来る
美しい物は特に早い
虹の橋、真っ赤な夕焼け、桜、小さな子供
あっという間もなく過ぎ去って行く
遅い振り子よ
幸せな時よ
ゆっくり静かに過ぎていって欲しい