Jリーグ開幕の前哨となるスーパーカップ


Jリーグ前年王者横浜Fマリノスと、
J2クラブながら奇跡の天皇杯優勝を果たしたヴァンフォーレ甲府が合間見える



私はひとりの男に注目していた



ヴァンフォーレ甲府背番号4番
センターバックの山本英臣選手である


オミさんと慕われるこの選手は、私と同学年の42歳で甲府一筋20年のヴァンティエラだ


ひとつ上の学年は、小野、稲本、遠藤、小笠原、中田 加地などいわゆる「黄金世代」であるが、私の学年はやや地味な感を否めない


「出世頭」の中村憲剛氏もとうにユニフォームを脱いでいる


そんな中、42にして現役を続けている同氏は、まさに鉄人というに相応しい


オミさんの玄人好みのプレーは、
大衆に理解されにくいが、同じプロフェッショナルからは一目置かれている


彼ほどの実力があれば「他の道」もあっただろう


しかし若かりし頃ヤンチャな風貌の彼は、様々な人との出会いから甲府という街を愛し、このクラブチームに捧げる覚悟を得たのだろう


我がアルビレックス新潟同様、このヴァンフォーレ甲府も地方クラブならではの苦難の道を経ている


その歴史を知るオミさんもいかばかりかの労苦があっただろうか


想像するに余りある


2022年10月16日(日)


次々とJ1クラブをなぎたおし、天皇杯決勝へと駒を進めたヴァンフォーレ甲府


サンフレッチェ広島との一戦、オミさんは延長戦後半から出場した


相手の猛攻に懸命に耐えるヴァンフォーレ甲府


獅子奮迅の堅守をみせたオミさんであったが無情にもペナルティエリア内でボールが腕にあたった


主審は冷酷にもペナルティスポットを指差す


私は

「蹴球の神はいないのか!」


心の中で叫んだ

「これだけクラブのために捧げた選手だぞ」

「なぜかくも冷酷な仕打ちをするのか!」


しかしその想いに応えたのだろうか


同じベテランGK河田が「このままでは終わらせじ」と気迫のセーブをみせる



試合はPK戦へ


最終キッカーのオミさんは見事にゴールネットを揺らし、自らヴァンフォーレ甲府を優勝に導く


「それにしても神様も粋なことをする」


天を見上げ、私はそう思った



2023年2月11日(土)

最寄りのローソンでカップラーメンを啜っていた私は会社へと向かう予定であった

仕事が溜まりすぎている・・・

ふとsportsnaviでスーパーカップのスタメンを確認してみた


「背番号4山本英臣」の名がある


私は進路を変え、家路を急ぎ、
この一戦を観戦することとした


オミさんの的確なラインコントロールやカバーリングは昨年引退した解説元日本代表センターバック槙野智章の賞賛の的となる



「にわか」には到底理解できまい


しかし後半、相手選手との激しい接触で膝を痛める

たおれこんだオミさんは、一度ピッチの外へ

やな予感がした・・・

私の蹴球統計上、選手生命を左右しかねない負傷だ・・・


そもそも私は昨シーズン限りでオミさんは引退することと思っていた



だってそうだろう


「最高のフィナーレ」ではないか


ドラマ化されても不思議ではない



しかしオミさんは、
「クラブが必要とするなら」と現役を続行した

その姿は晩節を汚すことを恐れず、日本航空再建を成し遂げた京セラ稲盛和夫名誉会長のお姿に重なる


交代か?


いや、オミさんはピッチに戻った

苦痛に顔をゆがめるシーンもあったが最後まで戦い抜いた


試合は2-1で敗れた


堂々たる戦いぶりであった


そこに資本力の差を言い訳にする姿は無い

まさにこの姿こそ、
6年ぶりにJ1の舞台で戦う我がアルビレックス新潟の指針となる



私は強欲な男だ



2024年は「川中島ダービー」が再びJ1の舞台で繰り広げられることを蹴球神に祈っている


そしてそこにピッチに立つオミさんの姿があることも・・・


信玄公と謙信公が天上で酒を酌み交わす姿が
ふと脳裏に浮かんだ