その人は、某医療機器メーカーの取締役社長で
小さな会社だからまだ若い。
三人兄弟の長男で、長男ならではの繊細な気遣い、責任感と
O型男性ならではの大らかさが
混在している。
低身長で細身。
お金はたくさん持ってるけれど、人生がお金だけではない事を知っている。
どうして、妻子ある身で私の所へ来てしまったのか。
私はハワイ帰りでとっても良い気分で、赤羽のイタリアンバルのテラスで友達とワインを飲んでいた。
ふと隣に1人で座った男性が彼だった。
仕立ての良いスーツに、でっかいリュックサックを背負って、PCと向き合ってワインを飲み始めた彼は、
夜目には彫りの深いその顔が外国人のように思えて、なんとなく目が合って、私から声をかけた。
こうして出会い、2人で二件目に移動するタクシーの中、
酔い過ぎた彼は私に言った。
自分の母親が2度目のすい臓がんを再発していて、医療機器を開発するのが自分の仕事なのに助けられないのが情けない。
自分は結婚していて、子供が2人。今は第三子が妻のお腹の中にいて、妻にも迷惑がかけられない。
今日nitecothuちゃんと出会って、初めて女性と仕事の話しが出来て楽になったから、今彼氏がいないなら、彼氏が出来るまで彼氏の代わりをさせて欲しい。
私は、
それならなおのこと、自宅に帰らなくてはいけないよ。
もしも私とあなたが交際する事になったとして、私にとってあなたは一番愛する人になるのに、あなたにとって私はその存在になれない。
そんな負け戦、しないよ。
と、告げ、その日はそのタクシーのまま帰宅させた。
つまり、彼は弱っていた。
誰かに頼りたかった。
でも、夫であり父親であり社長である彼は、
その辺で急に知り合った、赤の他人の私にしか助けを求められなかったんだ。