◇自治体「早急対応を」
 心と体の性が一致しない「性同一性障害」(GID)と診断された松江市の上田地優(ちひろ)さん(54)が国民健康保険証の性別欄に戸籍と異なる「女性」の表記を求めている問題で、東京都など全国の複数の自治体が厚生労働省に対応などを問い合わせていることが分かった。同省は上田さんの訴えを容認する方針で、正式決定後、島根県を通じて松江市に伝達する。ただ、同省国民健康保険課は「具体的な回答時期は検討中」としており、自治体からは早急な対応を求める声が出ている。【曽根田和久】
 上田さんは06年1月にGIDと診断された。今年4月に保険証がカード化され、性別表記が目立つようになったため、性別表記の変更を松江市に申し出た。市は7月、性別欄を空欄にした上で、裏面に特記事項として戸籍上の性別を手書きした保険証を交付。これに対し同省は、カード表面の性別欄に女性と表記し、裏面に男性と記載できるよう検討している。
 同省によると、7月半ばに一連の問題が報道されて以降、都道府県の一部から「(市区町村に)性別変更をしたいという住民の問い合わせがあった」などの相談が寄せられた。担当者は「各自治体には『松江市への回答時に他の自治体へも連絡する』と答えている」と話す。
 東京都台東区では、戸籍上は男性のGID当事者が窓口を直接訪れ、「(性別表記を)変えられるのであれば変えたい」と申し出た。区側は「現時点では対応しかねる」と応じたといい、取材に対し「国が何らかの通達を出してからの対応になる」と説明する。
 また、練馬区では2件の問い合わせがあった。同区によると、うち1人は変更を希望している様子だったといい、「調査して検討したい」と回答したという。担当者は「国が認めるのであれば対応できると思う」と話す。
 豊島区にも問い合わせがあった。7月下旬にあった東京23区の担当課長会議でも話題になり、同席した都の担当者に対し、国の方針を確認するよう要請したという。豊島区の担当者は「国は性別表記について方針を早く決めてほしい」と話している。
 こうした反響について、上田さんは「希望する性別で生活できる社会に早くなってほしい」と訴える。また、戸籍の性別を変更するための要件となっている性別適合手術について、「GIDの当事者で適合手術をしたくないという人も多い」と強調している。

8月22日朝刊


引用元[http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120822-00000 ]