何の変哲もないありふれた軽自動車だった。
だが、こいつも車転がせる歳になったんだな、こいつじゃ軽買うでも頑張ったんだろうよ。
って、乗り込む前からちょっと目頭が熱くなってやばかったわ。
それよりまいった、昼飯は俺の計画外。
時刻はすでに13時半すぎ、昼食には遅い時間ではあるし食ってくると思うじゃん、はぁぁ~ぬかったわ。
しばらく走ると「やよい軒」がある。
そういや、ちょっと前遅い晩飯をここで食おうと寄ったことがある。
入口の入店システム端末を操作し、印字された席に行ったらコックピットみたいな狭さのおひとり様仕様。そこに潜り込み薄暗い店内でタブレットで注文する。
なんか嫌になってすぐに退店、すき家で牛丼食ってたな。
さて、昨今の物価高でここの定食平均単価は1,000円くらい。
(食うんだろうなぁこいつ…)
えーと、ポチ、ポチ、、ポチポチポチっ!
お、おーいっ!タブレットよこせ!おまえそんなに食えるん?
腹減ってるしねー、父さん何食べる?
(こいつだけは…冷や汗でるわ)
1,000円くらいのもん適当に頼んでくれ、なんでもいいわ。
お、ここの卵焼きうまいよなー、これ追加で。
俺のほうが豪勢なんだが。
俺さ、こういう甘い卵焼き好きなんだよ。
母さんのも旨いっちゃうまいんだけど。
知ってたよ。
え?そうなの。
俺は出張ばっかりでたまにしか食卓を囲めなかった、だから出されたものは全部うまいって本気で食ってたつもりだったが、それでも何十年も付き合ってりゃわかるんだな。
今思えば色んなことを見透かされていた気もする。
あいつは俺らの母親だったのかもな。
つづく
