星の輝き、月の光 -42ページ目

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。


撮影は順調に進んだ。俺の演技はなかなかいいらしい。

それは監督の俺に対する期待が初めはかなり低かったから、意外にも悪くない俺の演技がそう見えたのかも知れない。

いや、それは違うな。俺はドラマに集中するために、ミニョへの電話もやめたんだ。いわば”ミニョ断ち”という犠牲を払って・・・

これも違うか。これじゃあ願掛け・・・神頼みみたいだ。俺は自分の実力で監督からの高評価を得たんだから。


初めてのドラマ出演。しかもいきなり主役というプレッシャーはとてつもなく大きく、とにかく演技に集中したかった俺は一時的にミニョとの連絡を絶った。

ミニョの勘違いから全て撮り終えるまで電話しないと心に誓ったが、ことあるごとにミニョのことが頭に浮かぶ。


引き出しに手が伸びる。

プライベート用の携帯はこの奥にしまったまま。

撮影はあと少しで終わる。

・・・俺はそのまま手を引っ込めた。


ミニョに電話しないと決めたのは正解だったのかそれとも不正解だったのか。

話ができない分、余計に声が聞きたくてあいつのことが気になって。でも声を聞けば今度は会いたくて仕事どころじゃなかったかも知れない。

だからたぶん正解だったんだろうと俺は思うことにした。






ドラマの撮影が終わった。拍手とともに受け取った花束を俺は息を止めたままマ室長へと渡した。そして早く帰ろうとスタジオを後にしようとしたが、もたついているマ室長のおかげで監督に捕まった。


「呑みに行くぞ!」


メンバーは日本ロケの時と同じ。悪夢がよみがえる。

あの日、共演者である酔いつぶれた女優を押しつけられた俺は、さんざんな目に遭った。

タクシーに乗ったとこまではまだいい。じっとしててもホテルまでは連れてってくれる。問題はその後だった。

まずぐったりとした女を車から降ろすのに一苦労。その上途中で少しだけ意識が戻った女は、「きゃっ、やだ、やめて、近づかないで。誰か・・・助けて」と、その日に撮影した台詞を口にし、俺を見て暴れ出すという、とんでもないことをしてくれた。

韓国語の判らない日本人でも目の前の状況は、嫌がる女を男が無理矢理連れ込むという光景に見えただろう。


「ち、ちがいます、俺たちは、はいゆうで、今のは、せりふで・・・」


今にも警察に通報しそうな目で見ている日本人に、俺は焦りながら日本語で説明した。しかしあまりにも慌てたため、ちゃんとした日本語になっていたかはいまいち自信がない。

その後も大変だった。

女の部屋が判らない俺はその辺に放り出すわけにもいかず、仕方なく自分の部屋へと連れて行く。そして目が覚めた時に妙な誤解をされないようにとソファーへ転がし、俺はベッドで寝た。

翌朝目覚めた女はそこが自分の部屋ではなく俺の部屋だと判ると、「またやっちゃった、ごめんね」と明るく笑った。どうやらよくあることらしい。今日のようにソファーで起きることもあれば、ベッドで寝ている男の横で起きることもあると言った。

俺はこの女とつき合っているという男が可哀想に思えてきた。もし会う機会があればぜひその男に助言してやりたい。「別れた方がいい」と。

その上いつの間にかホテルでの写真を撮られていたらしく、韓国に帰ってくれば空港で待ち構えていた記者に、「お2人はいつからそういった関係に・・・」と誤解たっぷりの目で質問責めにされた。


そんなわけで俺はこの女優と酒の席を共にするのは避けたかったのだが、監督の誘いを断りきれず、また呑みに行くことになってしまった。




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ミニョがアフリカへ行って数週間。

どんな生活をしているのかと毎日気が気じゃなかったが、そんな俺の心配をよそに、電話から聞こえてくる声は明るく楽しそうだった。

急なスコールでずぶ濡れになった話や仲良くなった子どもたちの話。全部聞いてやりたいが、そうもいかない。

そろそろドラマの撮影が始まる。

俺は役者ではないのだから、俺の演技力なんて最初っから期待されていないことは周りの反応を見れば判る。結局はA.N.JELLのファン・テギョン主演という話題が欲しいだけ。

だが俺はただの見世物で終わるつもりはない。

そんなことは俺のプライドが許さない。

忙しいスケジュールの中、役作りの為にジムに通い身体を作り、自分なりに演技も勉強し、台本は他の役者の台詞まで完璧に頭の中に入れ、と準備は怠らない・・・つもりだ。

付け焼刃だろうが何だろうが、今の俺に出来る最大限のことをして撮影に臨む。

そんなわけでドラマに集中したい俺は、しばらくの間連絡を絶つとミニョに告げた。


「ドラマの主演ですか。歌って曲も作って演技もできるなんて、さすがテギョンさんですね、すごいです!」


電話からキャーキャーとはしゃぐ声が流れてくる。


「判りました。私の方も明日からすごく忙しくなるから、なかなか電話できなくなるなって思ってたとこなんです。ですからテギョンさんも私のことは気にしないで、ドラマのお仕事がんばってください」


声のトーンからすると、胸の前で拳を握り、「ファイティン!」とポーズをとっているに違いない。

俺はちょっと拍子抜けした。もっと残念がると思ってたのに・・・


「電話してきても俺は出ないからな。寂しいかもしれないが、少しの間・・」


「じゃあ次にお話しできるのは撮影が終わった時ですね」


「へ?あ、いや、ちょっと待て」


「大丈夫です、お仕事の邪魔しないように、電話もメールもしませんから」


俺としては撮影のペースがつかめるまで・・・1、2週間くらいのつもりだったのに、ミニョは全ての撮影が終わるまでと勘違いしたらしい。しかも誰かに呼ばれたのか慌てた声で「切りますね」と言ってさっさと電話を切ってしまった。


おいおい、ずいぶんあっさりしてるじゃないか。


これで数日後俺が電話したら、「あれ?撮影が終わるまでって・・・もしかして寂しかったんですか?」と、くすくす笑いながら言われそうだ。

そう思うと、俺としても撮影が終わるまで絶対に電話しないぞ!という気になってくる。

俺は黙りこくった携帯を睨みつけ、机の引き出しの奥にしまった。






撮影は最初の10日間ほどは日本で行われた。その日本ロケの最終日、みんなで呑みに行くことになり、俺も半ば強制的に連れて行かれた。


監督、助監督、役者とスタッフが数人。

酒が回るにつれ、みんな普段見せない表情を見せ始め、最初はめんどくさいと思っていた俺もそれなりに楽しめた。だが、隣に座った女優の絡み酒には正直まいった。

俺より10歳以上も年上の女。10代前半から役者をやっているらしいからベテランといってもいいだろう。

俺の恋人という役だが、どうやら実生活でも俺と同い年くらいの男とつき合っているらしい。

相手の男はごく普通の会社員で、年下ということもあり有名女優の恋人に対して気後れしてか、あまり積極的ではないらしい。

それとも草食男子が肉食女子に捕まったのか。

そんな話をしながら彼女は酒をぐいっと呑む。ふと気づけば俺の周りは彼女以外、人がいなくなっていた。同じ部屋にはいるのだが、みんな俺たちから数メートルは離れている。

後で知ったことだが、彼女の酒癖は有名のようだ。酔いが回ると誰かつかまえてはとにかく話す。それは愚痴だったり相談だったりといろいろ。

適当に返事をしてその場から離れようとしたが、彼女はそれを許さない。呼ばれたふりをし、さり気なく立ち上がるが、すぐに袖を掴まれ座らされる。

トイレに立てば出口で待ち構えていて話の続きを聞いて欲しいと引っ張っていく。

何とかしてくれと周りに助けを求める視線を送るが、どうも俺は生贄にされたようで、誰も俺たちの方を見ようとしない。


「ねえ、どう思う?」


すわった目が俺の顔をじっと見る。

どう思うも何も年上の女とつき合ったことなんてないし、俺は一般人じゃない。一般人なのはミニョの方で・・・

俺はふと思った。ミニョは俺とつき合うということをどういう風に考えているのか。

恋人という関係にありながら、それらしいことはほとんどなく、いきなり超遠距離恋愛に突入してしまった俺たち。

あいつは帰ってきたら人目を気にせず俺と街を歩けるのか。






「テギョン、頼む、な」


頼むと渡されたのはついさっきまで俺に管を巻いていた女。他の連中は別の店で呑み直すからと、既にこの場にはいない。

貧乏くじを引かされた俺は大きなため息をつくと、酔いつぶれた女をタクシーに押し込み、宿泊先のホテルへ向かった。




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こんにちは(*^▽^*)

お久しぶりです、らんです。



最近、だいぶ涼しくなったな~と思ってたら、昨日は暑かった~

気温も高くて湿度も高い(-""-;)

久しぶりにエアコンつけました。

電源入れた途端お掃除ランプが点灯しちゃったけど、「まいっかー」とそのまま運転。


今日もむしむし暑いです。







さて、新しいお話ですが・・・

私の場合やっぱりここから始まるのよね~

ドラマの最終回のすぐ後です。




いつもは石橋を叩いて叩いて叩いて・・・

自分でひび入れちゃって渡れなくなるくらいとにかく叩きまくるんですが、今回はそれちょっと控え目にしてます。

ふかーく考えたらどつぼにはまりそうなんで(;^_^A

それが吉と出るか凶と出るか・・・



下書きはまだ途中までしか書けてませんが、ラストの方向が見えたのでアップしようと思います。

じゃないと、そのままお蔵入りしそうだからσ(^_^;)





うまく最後まで辿り着きますように・・・









。.:*゜゜*:..☆ 。.:*゜゜*:..☆ 。.:*゜゜*:..☆ 。.:*゜゜*:..☆ 。.:*゜゜*:..☆





車から降りた俺は足を止め、ビルのはるか頭上を飛ぶ飛行機を見上げた。


「チッ」


雲ひとつない、とまでは言わないが、白い画用紙に水色の絵の具で塗りたくったような空はやけに清々しく、俺はその青さに腹を立てる。

ミニョがアフリカへ発つまでの数日間、無理矢理オフを取り2人で過ごしたが、肝心の出発の日にどうしてもずらせない仕事があり、空港まで見送りに行けず、こうして飛んでいる飛行機をバカみたいに見上げるハメになってしまった。だが、俺の機嫌が悪いのには他にも理由があった。


俺以外のメンバーはミニョの見送りに行ったからだ。


ミナムはいい、あいつはミニョの兄貴だ。迷惑をかけた妹がこれからしばらくの間遠くへ行くのだから、空港まで見送りに行くのは当然だ。逆に荷物の1つも持たないようなら、みぞおちに軽く一発入れてやる。


俺が気にくわないのはシヌとジェルミだ。


はっきり言ってA.N.JELLをやめたミニョとあいつらの接点はいらない。

特にシヌ。

ジェルミは友達としてミニョのことを気にかけているようだが、シヌはどうだか判らない。沖縄の教会でミニョを抱きしめながら俺を見ていたあの目が脳裏に焼き付いて離れない。


俺は結構根に持つんだ。


俺のいない場所でシヌがどんな風にミニョを見ているのかと考えると、ムカムカと腹の中が熱くなる。


「ったく、さっさと帰って来いよ」


「テギョンさん、どうかしましたか?」


「・・・いや、何でもない」


車からは降りたものの、その場に立ち止まり空を見上げる俺の眼光は、飛行機を墜とせそうなほど鋭かったのか、スタッフがおどおどと声をかけた。






テレビ出演、雑誌の取材、新曲のプロモーション活動・・・

分刻みのスケジュールは相変わらずだが、余計なことを考える時間が少ない分、精神衛生上はいいのかも知れない。じゃなければミニョのことが気になって胃が痛くなっていただろう。しかしそれは「今あいつは何をしているのか」とか「早く会いたい」といった甘いものではなく、「野生動物に襲われてるんじゃないか」とか「移動中のジープから転げ落ちてやしないか」といった、事故多発地帯ならではの心配であって・・・


「もしもし、テギョンさん」


「無事か?どこも怪我してないか?」


ミニョとの電話の第一声がいつも生存確認のようになっていることに気づきもしない俺は、盗み聞きしていたジェルミが手で口を押さえて笑っていることにも気づいていなかった。






夜遅く帰って来た俺はベッドに寝転がり、ホッと息をついた。

昼間は妙な心配ばかりしてしまうが、この部屋にいると頭の中を占領するのはかつてのこと。ミニョと過ごした時間が少ないからか、思い出すのはいつも同じだった。


トイレの水でシャワーを浴びるのはあいつくらいだろう。

ろうそくの火を唾で消そうとするのも、あいつ以外にはいないと思う。

いきなり男と同じ部屋で寝ることになり、ベッドの横に布団を敷くのも。


そして今だったらと妙な妄想にふける。


トイレでびしょ濡れになったあいつに着替えだと俺のシャツを着せる。もちろん貸すのは上だけだ。俺の部屋にいる以上俺の命令に従えと、あいつ自身の服も着させない。

シャツの裾から覗く太腿と、もじもじと恥じらうミニョの姿を横目で見ながら、内心にんまりとしつつ俺は何事もないかのように五線紙に鉛筆を走らせる。

ベッドの横に布団を敷けば、俺は寝相が悪いふりをしてあいつの上に転がり落ちる。

驚いて飛び起きそうになるミニョを寝ぼけたふりで布団に押さえつけ、朝まで離さない。


はぁ・・・


俺が今眠れないのは不眠症のせいなのか?

ミニョのことを想い、悶々としているからなのか?


どっちにしてもこのまま睡眠不足が続けば、いずれ仕事にも差し支えるのは目に見えている。

俺は煌々と明かりのついた部屋の中、とにかく目を瞑り眠りの端を無理矢理掴んで、ようやく今日も1日が終わった。





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