ヤッてもいい・・・
下卑た笑いが男の顔に浮かんだ。その言葉の意味することに、腹の底から怒りがこみ上げてくる。
「何だよそれ」
俺は男の胸ぐらを掴むと思いっ切り引っ張り上げた。
男たちに対する怒りで俺の身体は震え、今にも足が床から浮き上がりそうなほど男を持ち上げた。
「お、おい、結局は失敗したんだからいいだろ。怒るなら依頼してきた奴にしろよ」
俺は男を突き放すと急いでミニョのところへ戻った。
「誰と待ち合わせしてる」
ミニョがこんなところに1人で飲みに来るとは思えない。誰かが一緒のはずだ。
「シヌさん、ですけど」
「他には」
「いいえ、誰も」
「ここに来ることを誰かに話したか?」
矢継ぎ早の俺の質問に、ミニョは気圧されたようにただ首を横に振った。
あの男たちに”依頼”したヤツは、ミニョがここへ来ることを知っていた。待ち合わせはシヌだけで、他の誰にも話してないなら、そいつはどうやって今日ミニョがここへ来ることを知ったんだ?
シヌが誰かに話したのか?
その誰かがミニョを狙ってるのか?
危ないところを助けてミニョの気を引こうとしてるのかと思ったが、ミニョを傷つけるのが目的なのか?
「待ち合わせは何時だ?」
「もう過ぎちゃったんですけど・・・でもついさっき、遅れるって連絡が・・・」
今日ジェルミはラジオにシヌが出ると言っていた。番組は生放送でまだ始まっていない。シヌはこの時間にここに来れないことは判っていたはずだ。それなのについさっき遅れるという連絡を?
俺はさっきの男たちにもう1度話を聞こうと振り返ったが、すでにテーブルに男たちの姿はなかった。
「チッ・・・とにかくここから出るぞ」
「私、シヌさんと約束してるんです」
「シヌはこれからラジオだ。1時間待ったって来やしない」
「それでも・・・約束してるんです。私、シヌさんが来るまでここにいます」
シヌにならどれだけ待たされても平気だという顔に俺はムカついた。
「そんな約束どうだっていいだろ」
「どうでもよくないです。今日はすごく大事な・・・大事な用事があるんです。だから私、シヌさんを待ちます」
「そんなにシヌに会いたいのか」
「会いたい、というか・・・会わなきゃいけないんです」
俺から目を逸らし俯くミニョ。だがその言葉にはどうしてもシヌに会うんだという強い意志が感じられた。
しかし俺も引くわけにはいかない。とにかく少しでも早くここから離れた方がいいだろう。
「俺は許可しない。シヌには具合が悪くなったから帰るとでもメールしておけ」
「そんな・・・」
俺は有無を言わせずミニョの腕を掴むと店から連れ出し、停めてあった車に押し込んだ。
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