日蝕 21 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。


気がつくと俺はうす暗い場所にいた。辺りを見回すとすぐ傍には巨大な水槽の中、悠々と泳ぐ魚たちが見える。

ああ、ここは水族館だ。しかも見憶えがある。

沖縄の水族館だ。

 

「自分のこと以外は何も見えませんか?」

 

静かな暗がりに悲痛な声が響く。

目の前には目に涙をため、辛そうな顔で俺を見るミニョ。そこへシヌが現れ、ミニョを俺から護るように抱きしめた。

 

「テギョンはそういうヤツなんだ。ひとの気持ちが判らない」

 

「だから何度もお店に来るんですね。私が嫌がってるのに気づかないなんて・・・一応お客さんだから仕方なく接客してるのに」

 

「自分のことしか考えてないんだよ。ミニョの気持ちなんて二の次で、自分のしたいように行動する男なんだ」

 

「シヌさんとは正反対ですね。シヌさんはいっつも私のことを1番に考えてくれます」

 

「俺にしといてよかっただろ」

 

「はい」

 

「俺のこと好き?」

 

「大好きです」

 

2人は俺のことなど目に入っていないのか、抱き合ったまま唇を重ねた。

 

 

 

 

 

「嫌な夢だな」

 

電気のついた部屋。遮光カーテンのおかげで今が朝なのか夜なのかも判らないが、もう1度寝る気にはなれなかった。

少しでも傍にいたいと思うのも、ミニョを取り戻したいと思うのも、結局は自分のことしか考えていないということなんだろうか。

ミニョは俺にはっきりとシヌが好きだと言った。本当にミニョのことを想うなら、俺はミニョの前から姿を消すべきなんだろうか・・・

夢のくせに頭の中にこびりつくように映像が残っていて気分が悪い。それを洗い流そうと熱いシャワーを浴びるが、なかなか消えなかった。






俺は変わらずにカフェへ通ってはいるが、あの夢が何かを暗示しているような気がして、今までの昂った気持ちは極力抑え、凪いだ海のような心でミニョを見ることにした。

仕事の様子、客と話している時の表情、俺への接し方・・・

するとある日、ミニョの変化に気がついた。笑ってはいるが、時々笑顔に陰りが見える。それはその日だけでなく、その後も続いた。


「悩み事か?心配事か?」


コーヒーカップを片付けに来たミニョに声をかけると、ミニョはカップへと伸ばした手を止め、驚いた顔で俺を見た。その顔は、どうして判るんですかと言っているように見えた。


「何かあるんだろ」


「別に、何も・・・」


視線を泳がせスッと顔を逸らし、口ごもるミニョ。


「15回。今日俺がここに来てから、コーヒーを1杯飲み終わるまでに、お前がついたため息の数だ。このまま幾つまでその数字を増やすつもりだ」


ミニョの表情が硬くなる。俺は何も答えないミニョの手首を掴んだ。


「誰かに話すだけで楽になることもある。ため息の理由、俺に話してみないか」


ミニョは目を瞑り一瞬キュッと口を結ぶと、自分の手首を掴んでいる俺の手をそっと引き離した。


「悩んでるようなことは何もありません。今日はちょっと・・・お昼ご飯食べすぎてお腹が苦しかっただけです」


それだけ言うと、ミニョは黙ったままカップを片付けた。




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